数列の極限11:「無限等比級数」

数学準備室

高校教員の『さん』です!

この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。

教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる

その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。

生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。

まずは、教科書の説明をみてみよう!

まずは教科書の説明

初項が \(a\)、公比が \(r\) の無限等比数列から作られる無限級数

$$a + ar + ar^2 + \cdots + ar^{n-1} + \cdots\tag{①}$$

を、初項 \(a\)、公比 \(r\) の無限等比級数という。

①の第 \(n\) 項までの部分和を \(S_n\)​ とする。

初項 \(a = 0\) のとき

無限数列\(\{S_n\}\)は\(0\)に収束する。

初項 \(a \neq 0\) のときは、次のようになる。

[1] 公比 \(r = 1\) のとき

$$S_n = a + a + \cdots + a = n \cdot a$$

\(a \neq 0\) であるから、無限数列 \(\{S_n\}\) は発散する。

[2] 公比 \(r \neq 1\) のとき

$$\displaystyle S_n = \frac{a(1 – r^n)}{1 – r} = \frac{a}{1 – r} – \frac{a}{1 – r} r^n$$

\(|r| < 1\) のとき\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} r^n = 0\)だから

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} S_n = \frac{a}{1 – r}\tag{②}$$

\(|r| \text{≧} 1\) または\(r>1\)のとき、数列\(\{r^n\}\)は発散するから、②により無限数列\(\{S_n\}\)も発散する。

以上から、無限等比数列の収束、発散について次のことがいえる。

初項 \(a\)、公比 \(r\)の無限等比数列の収束、発散は次のようになる。
初項 \(a \neq 0\)のとき
 \(|r| < 1\)ならば収束し収束し、その和は \(\displaystyle\frac{a}{1 – r}\)である
 \(|r| \text{≧} 1\)ならば発散する。
初項 \(a = 0\)のとき
 収束し、その和は\(0\)である。

簡単に説明するよ!

無限等比級数とは、等比数列の項を全て足した値のことだよ。

無限等比数列は、公比が\(-1\)から\(1\)の間のとき、 \(\displaystyle\frac{\text{(初項)}}{1 – \text{(公比)}}\) を計算したら求めることができるよ。

詳しく説明するよ!

無限数列と無限級数の違い

まずは復習から!

無限数列無限級数は、名前が似ているけど違うものだよ。

  • 無限数列は、数がずっと並んでいる列のこと
    $$1, 2, 3, \dots$$
  • 無限級数は、その数列を全部足し合わせたもの
    $$1 + 2 + 3 + \dots$$

無限級数は、「部分和 \(S_n\)​」を求めて、最終的にその極限 「\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} S_n\) 」を計算することで和を求めるんだ。


無限等比級数の定義と発散の例

無限等比級数は、等比数列をもとにした無限級数のことだよ。

たとえば

$$1 + 2 + 4 + 8 + \cdots$$

これは初項 \(1\)、公比 \(2\) の無限等比級数。

ここで注目するのは、公比 \(r\) の値だね。

上の例みたいに \(|r| \text{≧} 1\) の場合、項の値がどんどん大きくなるから、無限等比級数は発散してしまう。


無限等比級数が収束する場合

無限等比級数が収束するのは次の2つの場合だけ!

[1] 初項 \(a = 0\) の場合

たとえば、初項 \(0\)、公比 \(2\) の無限級数

$$0 + 0 \cdot 2 + 0 \cdot 2^2 + \cdots$$

どの項も \(0\) になるから、当然 \(0\) に収束するよ。

[2] 初項 \(a \neq 0\)、公比 \(-1 < r < 1\) の場合

たとえば、初項 \(3\)、公比 \(\displaystyle\frac{1}{2}\)​ の無限級数

$$3 + \frac{3}{2} + \frac{3}{4} + \frac{3}{8} + \cdots$$

等比数列の和を求める公式\(\displaystyle\frac{a(1 – r^n)}{1 – r}\)を使うと

$$ S_n = \frac{3(1 – \color{#32cd32}{(\frac{1}{2})^n})}{1 – \frac{1}{2}}$$

ここで \(n \to \infty\)の極限を取ると、\(\color{#32cd32}{\displaystyle\left(\frac{1}{2}\right)^n \to 0}\) だから

$$\color{red}{\lim_{n \to \infty} S_n = \frac{3}{1 – \frac{1}{2}}} = 6$$

このように、和が収束して \(6\) になるんだ!

ここで注目!

\(\displaystyle\color{red}{\frac{3}{1 – \frac{1}{2}}}\) は \(\displaystyle\color{red}{\frac{\text{(初項})}{1 – \text{(公比)}}}\) の形になってるね。

さん
さん

「\(\displaystyle\color{red}{\frac{\text{(初項)}}{1 – \text{(公比)}}}\) は導出も含めて覚えておこう!次の見出しで一般化するよ」


無限等比級数の和の公式

無限等比級数の和の公式を導出をするよ!

部分和を求める公式は

$$S_n = \frac{a(1 – r^n)}{1 – r}$$

ここで、もし公比が \(-1 < r < 1\) の範囲なら、\(\lim_{n \to \infty} r^n = 0\)になる。

だから、無限等比級数の和の公式は

$$\lim_{n \to \infty} S_n = \frac{a}{1 – r}$$

さん
さん

「この公式を使うときは必ず”公比が \(-1 < r < 1\)であるか”をチェックしてね!」

問: 初項 \(3\)、公比 \(\frac{1}{2}\)​ の無限等比級数の和を求めよ。
$$3 + \frac{3}{2} + \frac{3}{4} + \frac{3}{8} + \cdots$$

公比は\(\displaystyle\frac{3}{2}\)で、\(\displaystyle\left|\frac{3}{2}\right|<1\)であるから収束し、和は\(\displaystyle\frac{3}{1 – \frac{1}{2}}=6\)

最後に例題

例題: 次の無限等比級数の収束、発散を調べ、収束するときはその和を求めよ。

$$5 – \frac{5}{3} + \frac{5}{9} – \cdots$$

解答

公比は \(\displaystyle -\frac{1}{3}\)​ で、\(\displaystyle \left| -\frac{1}{3} \right| < 1\)であるから収束し、和は\(\displaystyle \frac{5}{1 – (-\frac{1}{3})} = \frac{5}{1 + \frac{1}{3}} = \frac{5}{\frac{4}{3}} = \frac{15}{4}\)

まとめ

  1. 無限等比級数とは?
    初項 \(a\)、公比 \(r\) を持つ等比数列の無限級数のこと。
    $$a + ar + ar^2 + \cdots$$
  2. 収束・発散の条件
    • 初項 \(a = 0\):収束し、和は \(0\)。
    • 初項 \(a \neq 0\)
      • \(|r| < 1\):収束し、和は \(\displaystyle\frac{a}{1 – r}\)
      • \(|r| \text{≧} 1\):発散する
さん
さん

「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」

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