数列の極限02:「数列の極限の基本的な性質」

数学準備室

高校教員の『さん』です!

この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。

教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる

その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。

生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。

まずは、教科書の説明をみてみよう!


まずは教科書の説明!

  • 定数倍の性質
    数列\(\{a_n\}\)が収束し、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha\)のとき
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} k \cdot a_n = k \cdot \alpha(ただし、kは定数)\)
     
  • 和と差の性質
    数列\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\)がそれぞれ収束し、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha\), \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \beta\)のとき
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n + b_n) = \alpha + \beta\), \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n – b_n) = \alpha – \beta\)
     
  • 積の性質
    数列\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\)がそれぞれ収束し、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha\), \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \beta\)のとき
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n \cdot b_n) = \alpha \cdot \beta\)
     
  • 商の性質
    数列\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\)がそれぞれ収束し、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha\), \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \beta\)のとき
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = \frac{\alpha}{\beta}\)
     
さん
さん

「この内容を次の見出しでわかりやすく、噛み砕いて説明するね」


簡単に説明するよ!

数列が収束するなら、

  • 数列に数字を掛けたら、極限も数字を掛けた結果になるってこと
  • 数列どうしを足したり引いたりしたら、極限も足したり引いたりした結果になるってこと
  • 数列どうしを掛けたら、極限も掛けた結果になるってこと
  • 数列を数列で割ったら、極限も割った結果になるってこと

詳しく説明するよ!

数列の定数倍、和・差、積、商の極限は代入するだけで求めれるんだ!

  • 定数倍の性質
    数列\(\{a_n\}\)を定数\(k\)倍した場合、数列が収束しているなら、その極限値をそのまま\(\boldsymbol{k}\)すればいいんだ。
     
    例えば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = 2\)、定数\(k = 3\)なら
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (3 \cdot a_n) = 3 \cdot 2 = 6\)
     
  • 和と差の性質
    数列\(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)が収束しているとき、それぞれの極限値を足したり引いたりすれば、全体の極限値がわかる。
     
    例えば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = 2, \lim_{n \to \infty} b_n = -3\)なら
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n + b_n) = 2 + (-3) = -1\)
     
  • 積の性質
    数列\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\)が収束している場合、極限値はそれぞれの極限値を掛けたものになる。
     
    例えば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = 2, \lim_{n \to \infty} b_n = -3\)なら
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n \cdot b_n) = 2 \cdot (-3) = -6\)
     
  • 商の性質
    数列\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\)が収束している場合、極限値はそれぞれの極限値で割ったものになる。
     
    例えば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = 2, \lim_{n \to \infty} b_n = -3\)なら
    \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = \frac{2}{-3} = -\frac{2}{3}\)

これらの公式は、収束する数列に対して極限を簡単に計算するためのルールみたいなものだよ!

次に、これらの性質を使う際の条件を確認してみよう。

さん
さん

「要は、そのまま代入できるってことだね!」


発散する例:不定形が計算できない理由

数列の極限の性質が使えるのは、\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\)がともに収束している場合だけ

数列が発散する場合には、これらの性質を使えないことがある。

特に\(\boldsymbol{\infty – \infty}\)\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty}{\infty}}\)のような形には注意しよう。

例えば、 \(\color{red}{a_n = n + 1}, \quad \color{blue}{b_n = n}\) で考える

このとき、

\(
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \color{red}{a_n} = \lim_{n \to \infty} \color{red}{ n + 1 }=\infty
\)

\(
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \color{blue}{b_n}= \lim_{n \to \infty} \color{blue}{n} = \infty
\)

だから、

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (\color{red}{ a_n} – \color{blue}{b_n}) = \infty – \infty = 0\)になりそうじゃない?

でもこれは大きな間違い!!

正しく、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (\color{red}{ a_n} – \color{blue}{b_n})\)を計算すると

\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (\color{red}{a_n} -\color{blue}{ b_n}) &= \lim_{n \to \infty} \{\color{red}{(n + 1)} – \color{blue}{n}\} \\
&= \lim_{n \to \infty} 1 \\
&= 1
\end{aligned}
\)

ここから、\(\boldsymbol{\infty – \infty}\)が 必ず0 になるわけではないことがわかる。

同じように、\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty}{\infty}}\)も必ず1になるわけではないんだ。

このような場合には、数列の具体的な形に基づいて計算する必要があるよ。

さん
さん

「収束していることが条件という点を見落としやすいから注意しよう!\(\infty – \infty\)や\(\displaystyle\frac{\infty}{\infty}\)を不定形といい、この形は注意が必要なんだ!」


最後に例題!

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = -3, \quad \lim_{n \to \infty} a_n = 2\)のとき、次の極限を求めよ。

(1)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (3 \cdot a_n + b_n)\)

(2)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n – 2)\)

(3)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{b_n + 4}{a_n – 3}\)

解答

(1)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (3 \cdot a_n + b_n) &= 3 \cdot \lim_{n \to \infty} a_n + \lim_{n \to \infty} b_n \\
&= 3 \cdot 2 – 3 \\
&= 3
\end{aligned}
\)

(2)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n – 2) &= \lim_{n \to \infty} a_n – \lim_{n \to \infty} 2\\
&= 2 – 2 \\
&= 0\\
\end{aligned}
\)

(3)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{b_n + 4}{a_n – 3} &= \frac{\displaystyle\lim_{n \to \infty} (b_n + 4)}{\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n – 3)} \\
&= \frac{-3 + 4}{2 – 3} \\
&= -1
\end{aligned}
\)

極限の性質をしっかり使いこなして、計算を簡単に進められるようにしよう!

まとめ:数列の極限の基本的な性質

数列の極限計算をスムーズに行うためには、次のポイントを押さえておこう。

  1. 極限の性質は収束している数列に対してのみ成り立つ!
    • 発散する数列、不定形( \(\boldsymbol{\infty – \infty}\) や \(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty}{\infty}}\) )が含まれる場合には注意が必要。
  2. 計算ルールを正確に適用しよう
    • 各数列が収束するなら、数列の定数倍、和・差、積、商の極限は代入するだけ。
さん
さん

「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」

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