数列の極限08:「無限等比数列\(\{r^n\}\)を含む極限(場合分け)」

数学準備室

高校教員の『さん』です!

この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。

教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる

その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。

生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。

まずは、教科書の説明をみてみよう!

まずは教科書の説明

例題:数列 \(\displaystyle\left\{ \frac{r^n}{1 + r^n} \right\}\) の極限を、次の各場合について求めよ。
(1) \(|r| < 1\)
(2) \(r < -1\)

解答

\( \begin{aligned} \text{(1) } \displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{r^n}{1 + r^n}&= \frac{0}{1 + 0} \\ &= 0 \end{aligned} \)
\( \begin{aligned} \text{(2) } \displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{r^n}{1 + r^n} &= \lim_{n \to \infty} \frac{1}{\frac{1}{r^n} + 1} \\ &= \frac{1}{0 + 1} \\ &= 1 \end{aligned} \)

簡単に説明するよ!

無限等比級数を含む極限の計算で、公比\(r\)が文字のままだったら、\(r\)の値によって場合分けしないといけないよ。

\(r\)が\(1\)より大きいときと、 \(r\)\が\(-1\)より小さいときは、((\frac{1}{r})^n\) が\(0\)になること使って、工夫して計算しないといけないよ。

詳しく説明するよ!

場合分けの考え方を押さえよう

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{r^n}{1 + r^n} \)を考えるよ!

このような、\(r\)が具体的な数値じゃない\(\{r^n\}\)の極限の問題は、場合分けをしないと解けないんだ。

これは、\(r\)の値によって極限が変わってきちゃうからだね。

復習:無限等比級数の基本

数列 \(\{r^n\}\) の極限は、\(r\) の値によって次のように変化するよ

  • \(r > 1\) のとき: \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} r^n = \infty\)
  • \(r = 1\) のとき: \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} r^n = 1\)
  • \(|r| < 1\) のとき: \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} r^n = 0\)
  • \(r \text{ ≦} -1\) のとき:数列 \(\{r^n\}\) は振動する

今回の例題を場合分けする理由

今回の問題では \(r\) の具体的な値がわからないから、「場合分け」をしないと正しい極限を求められないんだ。

以下の2つのケースを考えるよ。


(1) \(|r| < 1\) の場合

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{r^n}{1 + r^n} $$

このとき、\(\{r^n\}\) の極限は \(0\) (例:\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \left(\frac{1}{2}\right)^n=0 \))になるから、

$$\frac{0}{1 + 0}$$

よって答えは

$$0$$


(2) \(r < -1\) の場合

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{r^n}{1 + r^n} $$

この場合、\(\{r^n\}\) は振動する(例:\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \left(-2\right)^n \))から、このままでは計算できないんだ。

計算するには工夫が必要だよ!

さん
さん

「場合分けが面倒に見えるかもしれないけど、ポイントを押さえればサクッと解けるようになるよ!」

発散する場合の工夫

数列 \(\displaystyle\left\{\frac{r^n}{1 + r^n} \right\}\)の \(r < -1\) の場合を考えると、\(\{r^n\}\)は振動してしまうから、そのままでは極限を求められないんだ。

こういうときに必要なのが、「数列 \(\left\{(\frac{1}{r})^n\right\}\) に注目する」という視点!

\(\left\{(\frac{1}{r})^n\right\}\) に注目

\( r < -1 \)のとき、振動する数列 \(\left\{r^n\right\}\)は扱いにくい。

でも、\(\left\{(\frac{1}{r})^n\right\}\) にすれば、扱えるようになるんだ。

実際に、\(\left\{(\frac{1}{r})^n\right\}\) の極限を考えると、\( r < -1 \)のとき \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left(\frac{1}{r}\right)^n = 0\)

つまり、「\( r < -1 \)のとき\(\left\{(\frac{1}{r})^n\right\}\) の極限は 0 になる」という視点が、この問題を解くカギなんだ!

解法の流れ

1. まずは数式を整理しよう

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{r^n}{1 + r^n}$$

このままだと \(\{r^n\}\) が振動するせいで、極限に飛ばせない。

2. 分母・分子を \(r^n\) で割る

振動する数列 \(\{r^n\}\) を整理するために、分母と分子を \(r^n\)で割ると

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{(\frac{1}{r})^n + 1}$$

ここで、\((\frac{1}{r})^n\) の極限に注目するんだ。

3. 極限を飛ばす

\(r < -1\) のとき、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \left(\frac{1}{r}\right)^n = 0\)だから

$$\displaystyle\frac{1}{0 + 1}$$

よって答えは

$$1$$

これで、振動する \(\{r^n\}\) の場合でも極限がしっかり求められたね!

この視点を押さえよう!

ポイントは「数列 \((\frac{1}{r})^n\) に注目すること」。

発散する数列を整理して極限を飛ばせるようにする視点は、他の場合でも役に立つよ!

\((\frac{1}{r})^n\) の極限が 0 になるのは \(r > 1\) の場合も同じなんだ!

だから、\(r < -1\) の場合とまとめて、次のように考えられるよ

\(\displaystyle|r| > 1\) のとき\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \left(\frac{1}{r}\right)^n = 0\)

この視点を押さえておくと、どんな場合でもスムーズに計算できるようになるよ!

さん
さん

「発散する数列も工夫すれば解決できるんだ。この視点を持っておこう!」

最後に例題

数列 \(\left\{ \frac{1 – r^n}{1 + r^n} \right\}\) の極限を、次の場合について求めよ。

(1) \(r > 1\)

(2) \(r = 1\)

(3)\(|r| < 1\)

(4) \(r < -1\)

(1) \(r > 1\) の場合

\( \begin{aligned} \displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1 – r^n}{1 + r^n}&= \lim_{n \to \infty} \frac{\left(\frac{1}{r}\right)^n – 1}{\left(\frac{1}{r}\right)^n + 1} \\ &= \frac{0 – 1}{0 + 1} \\ &= \frac{-1}{1} \\ &= -1 \end{aligned} \)

(2) \(r = 1\) の場合

\( \begin{aligned} \displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1 – r^n}{1 + r^n}&= \frac{1 – 1}{1 + 1} \\ &= \frac{0}{2} \\ &= 0 \end{aligned} \)

(3) \(|r| < 1\) の場合

\( \begin{aligned} \displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1 – r^n}{1 + r^n}&= \frac{1 – 0}{1 + 0} \\ &= \frac{1}{1} \\ &= 1 \end{aligned} \)

(4) \(r < -1\) の場合

\( \begin{aligned} \displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1 – r^n}{1 + r^n}&= \lim_{n \to \infty} \frac{\left(\frac{1}{r}\right)^n – 1}{\left(\frac{1}{r}\right)^n + 1} \\ &= \frac{0 – 1}{0 + 1} \\ &= \frac{-1}{1} \\ &= -1 \end{aligned} \)

まとめ

今回のポイントを振り返ってみよう。

  • \(r\) の値が具体的でないときには、場合分けが必要になる。
  • 特に、\(r > 1\) や \(r < -1\) の場合は数列が発散するため工夫が必要だったね。
  • 「発散する数列は \((\frac{1}{r})^n\) に注目する」という視点を持つと、問題が解きやすくなるよ!

今回学んだ「場合分け」と「発散する数列に対する工夫」は、他の極限問題にも応用できる大切な考え方だよ。

しっかり身につけよう!

さん
さん

「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」

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