数列の極限13:「無限級数が発散することの証明」

数学準備室

高校教員の『さん』です!

この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。

教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる

その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。

生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。

まずは、教科書の説明をみてみよう!

まずは教科書の説明!

無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束するとする。

このとき、その和を\(S\)、第\(n\)項までの部分和を\(S_n\)とすると、数列\(\{S_n\}\)は\(S\)に収束する。

\(n\text{≧}2\)のとき、\(a_n=S_n-S_n-1\)であるから

\( \begin{aligned} \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n &= \lim_{n \to \infty} (S_n-S_{n-1}) \\ &= \lim_{n \to \infty} S_n – \lim_{n \to \infty} S_{n-1} \\ &= S – S \\ &= 0 \\ \end{aligned} \)

よって、無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束するとき\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n=0\)が成り立つ。

すなわち、次のことが成り立つ。

なお、\(2\)は\(1\)の対偶である。

  1. 無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束する \(\Rightarrow\) \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n=0\)
  2. 数列\(\{a_n\}\)が\(0\)に収束しない \(\Rightarrow\) 無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)は発散する

※\(1, 2\)の逆は成り立たない。

簡単に説明するよ!

無限級数\(a_1+a_2+\cdots\) が収束するなら、数列は0に近づいていく

この対偶も成り立つから、

数列が0に近づいていかないならば、無限級数\(a_1+a_2+\cdots+\) 発散する。

つまり、

無限級数が発散することを示したかったら、「数列が0に近づいていかない」ということを示せばいいってこと。

詳しく説明するよ!

無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束する\(\Rightarrow\)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n=0\)の説明

例えば、無限級数\(\displaystyle\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+\cdots\) は、公比が\(\displaystyle\left|\frac{1}{2}\right|<1\)だから収束するよね?

で、この数列は\(\displaystyle\frac{1}{2}→\frac{1}{4}→\frac{1}{8}\)って、だんだん\(0\)に近づいていっているのが分かる。

こんな感じで、無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束するなら、その数列は必ず\(0\)に近づいていくんだ。

「和と一般項の関係」と「無限級数の求め方」

これを証明するためには「和と一般項の関係」「無限級数の求め方」の知識とが必要。

和と一般項の関係」は、\(S_n=a_1+a_2+\cdots+a_{n-1}+a_n\)から\(S_{n-1}=a_1+a_2+\cdots+a_{n-1}\)を引くと、\(a_n\)だけが残るよってやつ。

\(a_n\)\(S_n-S_{n-1}\)が同じだから、\(a_n\)の極限と\(S_n-S_{n-1}\)の極限も同じって考えれるんだ。

「無限級数の求め方」は、無限等比級数\(a_1+a_2+\cdots\)は、部分和\(S_n\)の極限のことだったね。

また、部分和\(S_{n-1}\)の極限も無限級数と同じなんだ。

無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束する\(\Rightarrow\)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n=0\)の証明

上の知識を使って、「無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束するなら、その数列は必ず\(0\)に近づいていく」を証明していくよ。

無限等比級数\(a_1+a_2+\cdots\)が\(S\)に収束するとき、

\(a_n\)の極限は、\(S_n-S_{n-1}\)の極限のことで、

\(S_n\)の極限も\(S_{n-1}\)の極限も\(S\)になるから、

&&\lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} (S_n-S_{n-1}) = S – S = 0 &&

これで「無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束するなら、その数列\(\{a_n\}\)は必ず\(0\)に近づいていく」ってことが証明できたね!

さん
さん

「その逆、『数列\(\{a_n\}\)が\(0\)に近づいていくんだったら、無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)は必ず収束する』は成り立たないから注意してね!」

数列\(\{a_n\}\)が\(0\)に収束しない\(\Rightarrow\)無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)は発散するの説明

命題の真偽はその命題の真偽と一致するんだったね!

だから、「無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)が収束するなら、その数列\(\{a_n\}\)は必ず\(0\)に近づいていく」の対偶「数列\(\{a_n\}\)が\(0\)に近づいていかないなら、その無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)は必ず発散する」成り立つんだ!

これを使って、無限級数の発散を証明するとができるよ。

つまり、「数列\(\{a_n\}\)が\(0\)に近づいていかない」ことを示せれば、「無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)は発散する」ことを示したことになるってわけ!

無限級数が発散することの証明

次の例題で説明していくよ。

例題:無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty \frac{n}{n+1}\)は発散することを示せ。

無限級数が発散することを示したかったら、数列の極限が \(0\) にならないことを示せばよかったね。

この例題では

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{n+1}$$

\(0\) にならないことを示していくよ。

この極限は\(\displaystyle\frac{\infty}{\infty}\) の不定形だから、分母分子を分母の最高次数 \(n\) で割と、

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{1+\frac{1}{n}}$$

不定形が解消できたから、\(n \to \infty\)とすると、

$$1$$

になる。

これで数列の極限が 0 にならないことが示せたから、無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty \frac{n}{n+1}\)が発散することを示せたことになるってわけ。

解答

第\(n\)項は、\(\displaystyle a_n=\frac{n}{n+1}\)なので、

\( \begin{aligned} \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n &= \lim_{n \to \infty} \frac{n}{n+1} \\ &= \lim_{n \to \infty} \frac{1}{1+\frac{1}{n}} \\ &= 1 ≠ 0 \end{aligned} \)

よって、この級数は発散する。

さん
さん

無限級数が発散することを示したかったら、数列の極限が \(0\) にならないことを示そう!」

最後に例題

例題:無限級数 \(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty (-1)^{n-1} \cdot  (2n-1)\)は発散することを示せ。

第\(n\)項は、\(\displaystyle a_n=(-1)^{n-1} \cdot  (2n-1)\)なので、

\( \begin{aligned} \displaystyle \lim_{n \to \infty} |a_n| &= \lim_{n \to \infty} |(-1)^{n-1} \cdot (2n-1)| \\ &= \lim_{n \to \infty} (2n-1) \\ &= \infty ≠ 0 \end{aligned} \)

よって、この級数は発散する。

さん
さん

「符号の関係で\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n\)が直接求めづらい場合は、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n \neq 0 \Leftrightarrow \lim_{n \to \infty}|a_n| \neq 0 \) を利用するといいよ!」

まとめ

今回の内容を振り返ると、次のポイントが重要だったね。

  • 無限級数が収束するなら、その一般項は \(0\) に収束する。
    • 無限級数 \(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty a_n\)​ が収束するとき、一般項 \(a_n\)​ の極限は必ず \(0\) になる。
    • これは、「和と一般項の関係」「無限級数の求め方」を使って証明できる。
    • ただし、一般項が \(0\) になったとしても、級数が収束するとは限らないので注意。
  • 数列が \(0\) に収束しないなら、その無限級数は発散する。
    • 対偶を利用して、数列 \(a_n\)​ が \(0\) に収束しないことを示せば、級数の発散が証明できる。
  • 発散の証明の流れ
    1. 数列の極限を求める。
    2. 極限が \(0\) でないことを示す。
    3. したがって、級数が発散すると結論づける。

これらのポイントを押さえれば、無限級数の収束や発散の判断がスムーズにできるようになるはずだよ!

さん
さん

「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」

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