数列の極限10:「階差の和を用いる無限級数」

数学準備室

高校教員の『さん』です!

この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。

教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる

その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。

生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。

まずは、教科書の説明をみてみよう!

まずは教科書の説明

例題
次の無限級数の収束、発散を調べ、収束するときはその和を求めよ。

\( \displaystyle \text{(1) } \frac{1}{1\cdot 2} + \frac{1}{2\cdot 3} + \cdots + \frac{1}{n(n+1)} + \cdots \) \( \text{(2) } \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2} + 1} + \frac{1}{\sqrt{3} + \sqrt{2}} + \cdots + \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} + \cdots \)

解答

(1) 第 \(n\) 項までの部分和を \(S_n\)​ とすると

\( \begin{aligned} \displaystyle S_n &= \frac{1}{1\cdot 2} + \frac{1}{2\cdot 3} + \cdots + \frac{1}{n(n+1)} \\ &= \left(\frac{1}{1} – \frac{1}{2}\right) + \left(\frac{1}{2} – \frac{1}{3}\right) + \cdots + \left(\frac{1}{n} – \frac{1}{n+1}\right) \\ &= 1 – \frac{1}{n+1} \end{aligned} \)

よって \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left(1 – \frac{1}{n+1}\right) = 1\)

したがって、この無限級数は収束して、その和は \(1\) である。

(2) \(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} \)を有理化すると

\( \begin{aligned} \displaystyle \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} &= \frac{\sqrt{n+1} – \sqrt{n}}{(\sqrt{n+1} + \sqrt{n})(\sqrt{n+1} – \sqrt{n})} \\ &= \sqrt{n+1} – \sqrt{n} \end{aligned} \)

第 \(n\) 項までの部分和を \(S_n\) とすると

\( \begin{aligned} \displaystyle S_n &= (\sqrt{2} – \sqrt{1}) + (\sqrt{3} – \sqrt{2}) + \cdots + (\sqrt{n+1} – \sqrt{n}) \\ &= \sqrt{n+1} – 1 \end{aligned} \)

よって \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (\sqrt{n+1} – 1) = \infty\)

したがって、この無限級数は発散する。

簡単に説明するよ!

数列の隣り合う項同士の差のことを階差っていうよ。

無限級数の項を、階差の形に変形することで、部分和を簡単に求めることができるよ。

分母が掛け算のときは、部分分数分解を行うと階差の形に変形できるよ。

分母に平方根があるときは、有理化を行うと階差の形に変形できるよ。

詳しく説明するよ!

階差の形に注目してみよう!

最初に、無限級数の基本を少し復習しておこう!

無限級数「\(\displaystyle a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_n + \cdots\) 」を求める方法は

「\(a_1\)​ から \(a_n\) までの和 ”\(S_n\)” を求めて、 ”\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} S_n\)” を計算する」

だったね。


部分和 \(S_n\)​ を計算する際に大事なポイントは、一般項を「階差の形」に変形すること!

階差の形というのは、数列の各項 \(a_n\)​ を

$$a_n = f(n) – f(n+1)$$

のように「隣り合う項の差」で表す形のことだね。

部分和 \(S_n = a_1 + a_2 + \cdots + a_n\)を考えると、一般項 \(a_n\)​ を階差の形 \(f(n) – f(n+1)\)に直すことで、次のようになる。

$$ \require{cancel} \begin{aligned} S_n &= \color{#32cd32}{a_1} + \color{#ff00ff}{a_2} + \cdots + \color{#BC69F8}{a_n} \\ &= \color{#32cd32}{\left\{ f(1) – \cancel{f(2)} \right\} } + \color{#ff00ff}{\left\{ \cancel{f(2)} – \cancel{f(3)} \right\} } + \cdots + \color{#BC69F8}{\left\{ \cancel{f(n)} – f(n+1) \right\}} \end{aligned} $$

ここで、隣り合う項の「後ろ」と「前」が消えていくので、最終的には

$$S_n = f(1) – f(n+1)$$

だけが残るんだ。

この仕組みを利用すると、部分和を簡単に計算できるよ!

さらに、問題によっては「部分分数分解」や「有理化」を使って階差の形に変形することが必要になる場合があるよ。

これについては、次の例題を解きながら詳しく解説していこう!

「部分分数分解や有理化って難しく見えるけど、やることはシンプル。形を整えるだけで計算がスムーズになるよ!」

さん
さん

「階差の形にできると計算が一気に楽になるんだ。このテクニックは、数列や無限級数を解くときの基本スキルだから覚えておこう!」

部分分数分解と有理化の活用法

ここから具体的な例題を通して、部分分数分解有理化を活用して解く方法を見ていこう!

無限級数の一般項を「階差の形」に変形するには、部分分数分解有理化が鍵になることがあるよ。

この2つの技術を使って、教科書の例題を詳しく見ていこう!


例題(1)

$$\displaystyle \frac{1}{1\cdot 2} + \frac{1}{2\cdot 3} + \cdots + \frac{1}{n(n+1)} + \cdots$$

この問題では、一般項が \(\displaystyle\frac{1}{n(n+1)}\)​ という分数の形になっているね。

ここで、部分分数分解\(\displaystyle\frac{1}{AB} = \frac{1}{B-A}\left(\frac{1}{A} – \frac{1}{B}\right)\)を使うと、次のように変形できるよ。

$$\displaystyle\frac{1}{n(n+1)} = \frac{1}{n} – \frac{1}{n+1}$$

これで、一般項が階差の形に変形できた!

部分和 \(S_n\)​ を計算してみると、

$$ \require{cancel} \begin{aligned} \displaystyle S_n &= \color{#32cd32}{\frac{1}{1\cdot 2}} + \color{#ff00ff}{\frac{1}{2\cdot 3}} + \cdots + \color{#BC69F8}{\frac{1}{n(n+1)}} \\ &= \color{#32cd32}{\left(\frac{1}{1} – \frac{1}{2}\right) } + \color{#ff00ff}{\left(\frac{1}{2} – \frac{1}{3}\right) } + \cdots + \color{#BC69F8}{\left(\frac{1}{n} – \frac{1}{n+1}\right)} \end{aligned} $$

となるね。

このとき、隣り合う項の「後ろ」と「前」が消えていくから、

$$ \require{cancel} \begin{aligned} S_n &= \color{#32cd32}{\left( \frac{1}{1} – \cancel{\frac{1}{2}} \right) } + \color{#ff00ff}{\left( \cancel{\frac{1}{2}} – \cancel{\frac{1}{3}} \right) } + \cdots + \color{#BC69F8}{\left( \cancel{\frac{1}{n}} – \frac{1}{n+1} \right)} \end{aligned} $$

最終的には

$$S_n = 1 – \frac{1}{n+1}$$

となるよ。

あとは、\(n \to \infty\) のときの極限を考えれば、和が 1 に収束することがわかるね!


例題(2)

$$ \require{cancel} \begin{aligned} \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2} + 1} + \frac{1}{\sqrt{3} + \sqrt{2}} + \cdots + \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} + \cdots \end{aligned} $$

この問題では、一般項が \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}}\) という分数の形だね。

分母に平方根が含まれている場合は、有理化を使うといいよ。

分母と分子に \(\sqrt{n+1} – \sqrt{n}\) をかけてみよう。

$$ \require{cancel} \begin{aligned} \displaystyle \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} &= \frac{\sqrt{n+1} – \sqrt{n}}{(\sqrt{n+1} + \sqrt{n})(\sqrt{n+1} – \sqrt{n})} \end{aligned} $$

計算すると、分母が

$$ \require{cancel} \begin{aligned} (\sqrt{n+1})^2 – (\sqrt{n})^2 &= (n+1) – n \\ &= 1 \end{aligned} $$

となり、結果は

$$ \require{cancel} \begin{aligned} \color{red}{\frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} = \sqrt{n+1} – \sqrt{n}} \end{aligned} $$

これで、一般項が階差の形に変形できたね!

部分和 \(S_n\) を計算してみると、

$$ \require{cancel} \begin{aligned} \displaystyle S_n &= \color{#32cd32}{\frac{1}{\sqrt{2} + 1}} + \color{#ff00ff}{ \frac{1}{\sqrt{3} + \sqrt{2}}} + \cdots + \color{#BC69F8}{\frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}}} \\ &= \color{#32cd32}{(\sqrt{2} – \sqrt{1}) } + \color{#ff00ff}{(\sqrt{3} – \sqrt{2}) } + \cdots + \color{#BC69F8}{(\sqrt{n+1} – \sqrt{n})} \end{aligned} $$

となる。

ここでは、隣り合う項の「前」と「後ろ」が消えていくから、

$$ \require{cancel} \begin{aligned} S_n &= \color{#32cd32}{\left( \cancel{\sqrt{2}} – \sqrt{1} \right) } + \color{#ff00ff}{\left( \cancel{\sqrt{3}} – \cancel{\sqrt{2}} \right) } + \cdots + \color{#BC69F8}{\left( \sqrt{n+1} – \cancel{\sqrt{n}} \right)} \end{aligned} $$

最終的には

$$S_n = \sqrt{n+1} – 1$$

となるよ。

あとは \(n \to \infty\) の極限を考えれば、和が発散することがわかるね!

さん
さん

「部分分数分解や有理化って難しく見えるけど、やることはシンプル。形を整えるだけで計算がスムーズになるよ!」

最後に例題

例題:次の無限級数の収束、発散を調べ、収束するときはその和を求めよ。

\( \displaystyle \text{(1) } \frac{1}{1\cdot 3} + \frac{1}{3\cdot 5} + \cdots + \frac{1}{(2n-1)(2n+1)} + \cdots \) \( \text{(2) } \displaystyle \frac{1}{\sqrt{3} + 1} + \frac{1}{\sqrt{5} + \sqrt{3}} + \cdots + \frac{1}{\sqrt{2n+1} + \sqrt{2n-1}} + \cdots \)

(1) 第 \(n\) 項までの部分和を \(S_n\)​ とすると

\( \begin{aligned} \displaystyle S_n &= \frac{1}{1\cdot 3} + \frac{1}{3\cdot 5} + \cdots + \frac{1}{(2n-1)(2n+1)} \\ &= \frac{1}{2} \left(\frac{1}{1} – \frac{1}{3}\right) + \frac{1}{2} \left(\frac{1}{3} – \frac{1}{5}\right) + \cdots + \frac{1}{2} \left(\frac{1}{2n-1} – \frac{1}{2n+1}\right) \\ &= \frac{1}{2} \left(1 – \frac{1}{2n+1}\right) \end{aligned} \)

よって \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{2} \left(1 – \frac{1}{2n+1}\right) = \frac{1}{2}\)

したがって、この無限級数は収束して、その和は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) である。

(2) \(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2n+1} + \sqrt{2n-1}} \)を有理化すると

\( \begin{aligned} \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2n+1} + \sqrt{2n-1}} &= \frac{\sqrt{2n+1} – \sqrt{2n-1}}{(\sqrt{2n+1} + \sqrt{2n-1})(\sqrt{2n+1} – \sqrt{2n-1})} \\ &= \frac{\sqrt{2n+1} – \sqrt{2n-1}}{2} \end{aligned} \)

第 \(n\) 項までの部分和を \(S_n\) とすると

\( \begin{aligned} \displaystyle S_n &= \frac{1}{2} \left\{ (\sqrt{3} – \sqrt{1}) + (\sqrt{5} – \sqrt{3}) + \cdots + (\sqrt{2n+1} – \sqrt{2n-1}) \right\} \\ &= \frac{1}{2} \left(\sqrt{2n+1} – \sqrt{1}\right) \end{aligned} \)

よって \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} S_n = \frac{1}{2} \left(\sqrt{2n+1} – 1\right) = \infty\)

したがって、この無限級数は発散する。

まとめ

今回の記事では、「階差の和」を使って無限級数を解く方法を詳しく解説してきたよ。

ポイントを振り返ると、次のようになるね。

  1. 無限級数を扱うときは、部分和 \(S_n\) を求めることが基本
    • 部分和を計算して、その極限を調べることで無限級数が収束するか発散するかがわかる。
  2. 階差の形に変形すると計算が簡単になる
    • 階差の形 \(a_n = f(n) – f(n+1)\) を利用すると、隣接する項が消えて簡単に部分和を求められる。
  3. 部分分数分解や有理化を活用しよう
    • 例題(1)では部分分数分解を使い、例題(2)では有理化を使って一般項を階差の形に変形したよ。
  4. 極限を考えることで和が収束するか発散するかを判断できる
    • 収束する場合は和を計算して答えを出す。発散する場合はそのことを明記すればOK!

このように、階差を使った無限級数の解法は計算がスッキリ進む便利な方法だよ!

さん
さん

「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」

コメント

タイトルとURLをコピーしました