数列の極限05:「はさみうちの原理と追い出しの原理」

数学準備室

高校教員の『さん』です!

この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。

教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる

その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。

生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。

まずは、教科書の説明をみてみよう!

まずは教科書の説明

数列\(\{a_n\},\{b_n\},\{c_n\}\)の極限について、次のことが成り立つ。

はさみうちの原理
\(b_n \text{ ≦ } a_n \text{ ≦ } c_n\) ​ であるとき、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \lim_{n \to \infty} c_n = \alpha\) ならば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha\)

追い出しの原理
\(a_n \text{ ≦ } b_n\) であるとき、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \infty\) ならば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \infty\)

簡単に説明するよ!

はさみうちの原理とは、

ある数列が、自分より小さい数列と自分より大きい数列の間に存在するとき、
両隣の数列の極限が同じ値に近づいていくなら、挟まれた自分自身の極限も、その値に近づいていくよってこと。

追い出しの原理とは、

自分より小さい数列の極限が\(\infty\)に近づいていくなら、自分も追い出されて\(\infty\)に近づいていくよってこと。

要は、

2つの数列が同じ値に近づくなら、挟まれた数列もその値に近づいていくし、

自分より小さい数列が\(\infty\)に近づいていくなら、自分も\(\infty\)に近づいていくよってこと。

詳しく説明するよ!

はさみうちの原理

主に三角関数が絡む数列の極限の問題は、「はさみうちの原理」が役に立つんだ!
次の例題をはさみうちの原理を使って解いてみよう。

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sin \frac{n\pi}{3}$$


手順1:三角関数の範囲を考える

三角関数 \(\sin\) や \(\cos x\) の値は、\(\boldsymbol{-1}\) から \(\boldsymbol{1}\) までの範囲に収まるね。

この問題に出てくる \(\displaystyle \sin \frac{n\pi}{3}\) ​ も同じく次の範囲に収まるよ

$$\displaystyle-1 \text{ ≦ } \sin \frac{n\pi}{3} \text{ ≦ } 1$$


手順2:数列全体を挟む不等式を作る

この範囲に \(\boldsymbol{\displaystyle\frac{1}{n}}\) ​ をかけると次の不等式が成り立つ

$$\displaystyle -\frac{1}{n} \text{ ≦ } \frac{1}{n} \sin \frac{n\pi}{3} \text{ ≦ } \frac{1}{n}$$


手順3:左右の極限を考える

  • 左の数列 \(\displaystyle-\frac{1}{n}\) ​ の極限は \(\boldsymbol{0}\) になる。
  • 右の数列 \(\displaystyle\frac{1}{n}\)​ の極限も \(\boldsymbol{0}\) になる。

手順4:はさみうちの原理を使う

左と右の数列の極限が \(\boldsymbol{0}\) になるから、「はさみこまれた」真ん中の数列 \(\boldsymbol{\displaystyle\frac{1}{n} \sin \frac{n\pi}{3}}\) ​ の極限も \(\boldsymbol{0}\) にならないといけない!

これが「はさみうちの原理」なんだ。


一般化した形

「はさみうちの原理」を一般化すると次のように言える

\(b_n \text{ ≦ } a_n \text{ ≦ } c_n\) ​ であるとき、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \lim_{n \to \infty} c_n = \alpha\) ならば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha\)


まとめ

不等式の左と右の極限が \(\boldsymbol{\alpha}\) になるなら、「はさみこまれた真ん中の極限も \(\boldsymbol{\alpha}\) になるよ!ってこと。


〜解答〜

\(\displaystyle-1 \text{ ≦ } \sin \frac{n\pi}{3} \text{ ≦ } 1\)より \(\displaystyle -\frac{1}{n} \text{ ≦ } \frac{1}{n} \sin \frac{n\pi}{3} \text{ ≦ } \frac{1}{n}\)

ここで\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} -\frac{1}{n} = 0 \), \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0 \)

よって、はさみうちの原理より \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sin \frac{n\pi}{3} = 0\)

さん
さん

「はさみうちの原理は、両端から挟むっていうイメージすると覚えやすいよ!」

追い出しの原理

追い出しの原理」は、数列の極限が無限大に発散する場合に使える法則だよ。

次の例題を追い出しの原理を使って解いてみよう。

$$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left(n + \sin \frac{n\pi}{3}\right)$$


手順1:三角関数の範囲を考える

三角関数 \(\sin x\) の値は \(\boldsymbol{-1}\) 以上の範囲になるね。

この問題に出てくる \(\displaystyle \sin \frac{n\pi}{3}\) ​ も同じく次の範囲になるよ

$$-1 \text{ ≦ } \sin \frac{n\pi}{3}$$

※「はさみうちの原理」と違って左の範囲だけを考えればいいんだよ!


手順2:数列全体を挟む不等式を作る

この範囲に基準の数列 \(n\) を加えると次の不等式が成り立つ

$$\displaystyle n – 1 \text{ ≦ } n + \sin \frac{n\pi}{3}$$


手順3:極限を考える

  • 左の数列 \(\boldsymbol{n – 1}\) の極限は\(\boldsymbol{\infty}\) になる

手順4:追い出しの原理を適用する

左の数列の極限が\(\boldsymbol{\infty}\)だから、今回求めたい数列 \(\boldsymbol{\displaystyle n + \sin \frac{n\pi}{3}}\) ​ も「追い出されて」\(\boldsymbol{\infty}\) に発散しないといけない!

これが「追い出しの原理」なんだ。


一般化した形

追い出しの原理を一般化すると次のように言える

\(a_n \text{ ≦ } b_n\) であるとき、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \infty\) ならば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \infty\)


まとめ

不等式で左の数列が\(\boldsymbol{\infty}\)に発散するなら、右の数列も「追い出されて」\(\boldsymbol{\infty}\)に発散するよ!ってこと。


〜解答〜

\(\displaystyle-1 \text{ ≦ } n + \sin \frac{n\pi}{3}\)より \(\displaystyle n – 1 \text{ ≦ } n + \sin \frac{n\pi}{3}\)

ここで\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left(n – 1\right) = \infty \)

よって、追い出しの原理より \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left(n + \sin \frac{n\pi}{3}\right) = \infty\)

さん
さん

「追い出しの原理は、無限大になるって分かれば意外と簡単!自分より小さい数列が無限大になるってことを示せばOK!」

最後に例題

次の極限を求めよ。

$$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \cos \frac{n\theta}{6}$$


〜解答〜

\(\displaystyle-1 \text{ ≦ } \cos \frac{n\theta}{6} \text{ ≦ } 1\)より \(\displaystyle -\frac{1}{n} \text{ ≦ } \frac{1}{n} \cos \frac{n\theta}{6} \text{ ≦ } \frac{1}{n}\)

ここで\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} -\frac{1}{n} = 0 \), \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0 \)

よって、はさみうちの原理より \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \cos \frac{n\theta}{6} = 0\)

さん
さん

「少し複雑そうな三角関数も、範囲を思い出せば大丈夫!こうやって地道に計算力をつけていこうね。」

まとめ

「はさみうちの原理」と「追い出しの原理」は、主に三角関数を含む数列の極限を求めるときに便利だよ。

それぞれのポイントを簡単に振り返ろう!


はさみうちの原理

  • 条件
    数列 \(\{b_n\}\)、\(\{c_n\}\) が \(\{a_n\}\) を挟み込む形で、すべての \(n\) について次の不等式が成り立つ
    $$b_n \text{ ≦ } a_n \text{ ≦ } c_n$$
    両端の数列の極限が同じ値に収束する場合
    $$\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \lim_{n \to \infty} c_n = \alpha$$
    このとき、真ん中の数列も同じ極限を持つ
    $$\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha$$
  • 特徴
    挟まれている数列の極限が直接求めにくい場合でも、周りの数列を利用して極限を見つけられる。

追い出しの原理

  • 条件
    \(\{a_n\}\)と \(\{b_n\}\) が不等式を満たし、すべての \(n\) について次が成り立つ
    $$a_n \text{ ≦ } b_n$$
    さらに、数列 \(\{a_n\}\)の極限が無限大に発散する場合
    $$\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \infty$$
    このとき、数列 \(\{b_n\}\)も無限大に発散する
    $$\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \infty$$
  • 特徴
    数列が無限大に発散することは、それより小さい数列が無限大に発散すること示せば証明できる。

極限の大小関係を理解するメリット

  • 三角関数などを含む、複雑な数列の極限を考えるときに役立つ。
  • 不等式をうまく利用すれば、直接計算が難しい数列でも極限を簡単に求められる。

「はさみうちの原理」と「追い出しの原理」をしっかりマスターして、極限の計算をもっと得意になろう!

さん
さん

「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」

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