数列の極限03:「数式と分数式の極限」

数学準備室

高校教員の『さん』です!

この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。

教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる

その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。

生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。

まずは、教科書の説明をみてみよう!

まずは教科書の説明!

数列\(\{a_n\}, \{b_n\}\)が発散する、すなわち以下が成り立つとき

  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \infty\)
  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \infty\)

次の性質が成り立つ

  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n + b_n) = \infty\)
  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n \cdot b_n) = \infty\)
  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\frac{1}{a_n} = 0\)

また、次のような場合には工夫が必要

  • \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_n – b_n)\)のとき

    \(
    \begin{aligned}
    \text{例題:}
    \displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n) &= \lim_{n \to \infty} n^2 \left( 1 – \frac{3}{n} \right) \\
    &=\infty
    \end{aligned}
    \)
  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n}\)のとき

    \(
    \begin{aligned}
    \text{例題:}
    \displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} &= \lim_{n \to \infty} \frac{n}{n\left(2+\frac{1}{n}\right)} \\
    &=\lim_{n \to \infty} \frac{1}{2+\frac{1}{n}} \\
    &=\frac{1}{2}
    \end{aligned}
    \)

簡単に説明するよ!

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n, \lim_{n \to \infty}b_n\)が\(\infty\)に発散するなら、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}(a_n+b_n)\) も \(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n \times b_n\)も\(\infty\)に発散する。

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n\)が\(\infty\)に発散するなら、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{1}{a_n}\)は\(0\)に収束するする。

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n, \lim_{n \to \infty}b_n\)が\(\infty\)に発散するなら、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_n – b_n)\)は最高次数の項でくくり、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n}\)は分母の最高次数の項で分母・分子を割ることで計算することができる。

詳しく説明するよ!

まずは、基本的な数列の極限について解説していくよ。

1, 2, 3, …って続いていく数列の極限 \(\boldsymbol{\displaystyle\lim_{n \to \infty} n}\) は \(\boldsymbol{\boldsymbol{\infty}}\) に発散していくよ。

そして \(\boldsymbol{1, \frac{1}{2}, \frac{1}{3}, \dots}\)って続いていく数列の極限 \(\boldsymbol{\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}}\) は分母がだんだん大きくなっていくから 0 に収束していく。

  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} n=\infty\)
  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}=0\)

さらに、この数列にプラスの指数がついても結果は同じ。

たとえば

  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} n^2 = \infty\)
  • \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n^2} = 0\)

「\(\infty + \infty\)」や「\(\infty \times \infty\)」の扱い方

「\(\boldsymbol{\infty + \infty}\)」ってどうなると思う?

そうだね。これは予想通り。「\(\boldsymbol{\infty}\)」なるんだ。

例えば、

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 + n^3)\)は\(\infty + \infty\)だから\(\infty\)になる。

じゃあ「\(\boldsymbol{\infty \times \infty}\)」はどうなると思う?

これも予想通り、「\(\boldsymbol{\infty}\)」になる。

例えば、

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 \times n^3)\)は\(\infty \times \infty\)だから\(\infty\)になる。

※\(\infty \)は値じゃないから、\(\boldsymbol{\infty + \infty}\)\(\boldsymbol{\infty \times \infty}\)は書いたらダメだよ!

\(\boldsymbol{\infty + \infty}\)の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 + n^3)=\infty\)

\(\boldsymbol{\infty}\)の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 \times n^3)=\infty\)

これらの結果は直感的で扱いやすいけど、注意が必要なのは「\(\infty – \infty\)」「\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \)」のような場合。

この形を「不定形」って呼ぶよ。

このような場合は工夫が必要だよ。

次で詳しく解説していくね!


不定形ってなに?「 \(\infty – \infty\) 」や「 \(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \)  」の扱い方

数列の極限を考えるときに、「不定形」という形が出てくることがある。

不定形とは、計算してもそのままでは結果が決まらない形のことだよ。

具体的には次のような形が不定形に当てはまる

不定形
\(\infty – \infty\),\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty }  (\infty \cdot 0)\)

たとえば、次のような例を見てみよう

\(\boldsymbol{\infty – \infty}\) の形である\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)\)

これはどんな値になると思う?

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)\)は\(\infty – \infty\)だから、\(2-2\)が\(0\)になるのと同じように、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)\)も\(0\)になる?

実はこれ、不正解なんだ。

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)=0\)じゃなくて、正解は\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)=-\infty\)

他にも\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^2)\)も\(\infty – \infty\) の形なんだけど \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^2)=0\)になる。

\(\boldsymbol{\infty – \infty}\) の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)=-\infty\) ,  \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^2)=0\)

同じ\(\infty – \infty\) であっても、答えは変わっくるんだ。

次は\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\) の形である\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2} \)

これはどんな値になると思う?

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2} \)は\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \)だから、\(\displaystyle\frac{2}{2}\)が\(1\)になるのと同じように、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}\)も\(1\)になる?

実はこれも、不正解

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=1\)じゃなくて、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=\infty\) が正解

他にも\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^3} \)も\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \) の形なんだけど \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=1\)になる。

\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\) の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=\infty\) ,  \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=1\)

同じ\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \) であっても、答えは変わっくるんだ。

このように、\(\boldsymbol{\infty – \infty}\)\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\)不定形と言って、計算してもそのままでは結果が決まらないんだ。

じゃあどうするかと言うと、不定形の極限は、不定形ではない形に変形してから計算する必要がある。

具体的には

  • \(\boldsymbol{\infty – \infty }\)の場合:「最高次数の項でくくる」
  • \(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\)の場合:「分母の最高次数の項で分母と分子を割る」

具体的な解き方は次で詳しく説明するね!


整式と分数式の極限を解くコツ

整式の極限のコツ\(\infty – \infty \)の場合は最高次数の項でくくる」

たとえば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n)\) を考えるとき、最高次数の項でくくるのがポイント。

この場合、\(n^2 – 3n\)の最高次数の項\(n^2\)でくくってあげる

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n) = \lim_{n \to \infty} n^2 \left( 1 – \frac{3}{n} \right)\)

ここで \(\displaystyle\frac{3}{n} \to 0\) だから、この極限は \(\infty \cdot (1 – 0)\) で \(\infty \)になる。

※\(\infty \)は値じゃないから、\(\boldsymbol{\infty \cdot (1 – 0)}\)は書いたらダメだよ!

\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n) &= \lim_{n \to \infty} n^2 \left( 1 – \frac{3}{n} \right) \\
&=\infty
\end{aligned}
\)

分数式の極限のコツ「\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty }\) の場合は分母の最高次数の項で分母と分子を割る」

次に、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} \) を考えてみよう。

この場合、分母の最高次数(この場合は \(n)\)で分母と分子を割る。

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} \ = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{2+\frac{1}{n}}\)

ここで \(\displaystyle\frac{1}{n} \to 0\) だから、この極限は \(\displaystyle\frac{1}{2}\)になる。

\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} &= \lim_{n \to \infty} \frac{1}{2+\frac{1}{n}} \\
&=\frac{1}{2}
\end{aligned}
\)

このように、「最高次数の項でくくる」「分母の最高次数の項で分母と分子を割る」といったテクニックを使うと、不定形を解消して計算できるんだ。


最後に例題!

次の極限を求めよ。

(1) \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} n^{-\frac{1}{1000}}\)

(2) \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2-4n^3)\)

(3) \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{3n}{n^2-2}\)

(1)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} n^{-\frac{1}{1000}} &= \lim_{n \to \infty} \left(\frac{1}{n}\right)^{\frac{1}{1000}} \\
&=0
\end{aligned}
\)

(2)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2-4n^3)&=\lim_{n \to \infty} n^3\left(\frac{1}{n}-4\right) \\
&=-\infty
\end{aligned}
\)

(3)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{3n}{n^2-2}&=\lim_{n \to \infty} \frac{3\cdot\frac{1}{n}}{1-\frac{2}{n^2}}\\
&=0
\end{aligned}
\)


まとめ:数式と分数式の極限

ここまで、数列の極限の基本から、不定形の扱い方、そして整式や分数式の極限の計算方法について解説してきました。

要点を整理すると

  • 数列の基本的な極限
    発散や収束の基本パターンを押さえよう。
  • 不定形の概念
    「\(\infty – \infty\)」\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty }\)」をそのまま扱わず、不定形ではない形に変形する。
  • 整式と分数式の極限
    「最高次数の項でくくる」「分母の最高次数の項で分母と分子を割る」ことで不定形ではない形に変形できる。

これらのテクニックをしっかりマスターして、整式と分数式の極限問題を自信を持って解けるようにしよう!

さん
さん

「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」

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