高校教員の『さん』です!
この記事を見ると、「教科書の内容が分からない」から「教科書の言いたいことが分かる」ようになるよ。
教科書が読めるようになると、効率よく勉強が進められるようになって、問題集や参考書もスラスラ読めるようになる!
その力が、テストや受験に役立つ自信に変わるんだ。
生徒と関わる中で、気づいたことや学んだこと、そして生徒から寄せられた質問や、よくつまずくポイントを踏まえて、教科書の内容を噛み砕いて説明していくよ。
まずは、教科書の説明をみてみよう!
まずは教科書の説明!
数列\(\{a_n\}, \{b_n\}\)が発散する、すなわち以下が成り立つとき
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n = \infty\)
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} b_n = \infty\)
次の性質が成り立つ
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n + b_n) = \infty\)
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (a_n \cdot b_n) = \infty\)
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\frac{1}{a_n} = 0\)
また、次のような場合には工夫が必要
- \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_n – b_n)\)のとき
\(
\begin{aligned}
\text{例題:}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n) &= \lim_{n \to \infty} n^2 \left( 1 – \frac{3}{n} \right) \\
&=\infty
\end{aligned}
\) - \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n}\)のとき
\(
\begin{aligned}
\text{例題:}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} &= \lim_{n \to \infty} \frac{n}{n\left(2+\frac{1}{n}\right)} \\
&=\lim_{n \to \infty} \frac{1}{2+\frac{1}{n}} \\
&=\frac{1}{2}
\end{aligned}
\)
簡単に説明するよ!
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n, \lim_{n \to \infty}b_n\)が\(\infty\)に発散するなら、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}(a_n+b_n)\) も \(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n \times b_n\)も\(\infty\)に発散する。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n\)が\(\infty\)に発散するなら、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{1}{a_n}\)は\(0\)に収束するする。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n, \lim_{n \to \infty}b_n\)が\(\infty\)に発散するなら、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_n – b_n)\)は最高次数の項でくくり、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n}\)は分母の最高次数の項で分母・分子を割ることで計算することができる。
詳しく説明するよ!
まずは、基本的な数列の極限について解説していくよ。
1, 2, 3, …って続いていく数列の極限 \(\boldsymbol{\displaystyle\lim_{n \to \infty} n}\) は \(\boldsymbol{\boldsymbol{\infty}}\) に発散していくよ。
そして \(\boldsymbol{1, \frac{1}{2}, \frac{1}{3}, \dots}\)って続いていく数列の極限 \(\boldsymbol{\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}}\) は分母がだんだん大きくなっていくから 0 に収束していく。
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} n=\infty\)
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}=0\)
さらに、この数列にプラスの指数がついても結果は同じ。
たとえば
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} n^2 = \infty\)
- \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n^2} = 0\)
「\(\infty + \infty\)」や「\(\infty \times \infty\)」の扱い方
「\(\boldsymbol{\infty + \infty}\)」ってどうなると思う?
そうだね。これは予想通り。「\(\boldsymbol{\infty}\)」なるんだ。
例えば、
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 + n^3)\)は\(\infty + \infty\)だから\(\infty\)になる。
じゃあ「\(\boldsymbol{\infty \times \infty}\)」はどうなると思う?
これも予想通り、「\(\boldsymbol{\infty}\)」になる。
例えば、
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 \times n^3)\)は\(\infty \times \infty\)だから\(\infty\)になる。
※\(\infty \)は値じゃないから、\(\boldsymbol{\infty + \infty}\)や\(\boldsymbol{\infty \times \infty}\)は書いたらダメだよ!
\(\boldsymbol{\infty + \infty}\)の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 + n^3)=\infty\)
\(\boldsymbol{\infty}\)の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 \times n^3)=\infty\)
これらの結果は直感的で扱いやすいけど、注意が必要なのは「\(\infty – \infty\)」や「\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \)」のような場合。
この形を「不定形」って呼ぶよ。
このような場合は工夫が必要だよ。
次で詳しく解説していくね!
不定形ってなに?「 \(\infty – \infty\) 」や「 \(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \) 」の扱い方
数列の極限を考えるときに、「不定形」という形が出てくることがある。
不定形とは、計算してもそのままでは結果が決まらない形のことだよ。
具体的には次のような形が不定形に当てはまる
不定形:
\(\infty – \infty\),\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } (\infty \cdot 0)\)
たとえば、次のような例を見てみよう
\(\boldsymbol{\infty – \infty}\) の形である\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)\)
これはどんな値になると思う?
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)\)は\(\infty – \infty\)だから、\(2-2\)が\(0\)になるのと同じように、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)\)も\(0\)になる?
実はこれ、不正解なんだ。
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)=0\)じゃなくて、正解は\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)=-\infty\)
他にも\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^2)\)も\(\infty – \infty\) の形なんだけど \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^2)=0\)になる。
\(\boldsymbol{\infty – \infty}\) の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^3)=-\infty\) , \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – n^2)=0\)
同じ\(\infty – \infty\) であっても、答えは変わっくるんだ。
次は\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\) の形である\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2} \)
これはどんな値になると思う?
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2} \)は\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \)だから、\(\displaystyle\frac{2}{2}\)が\(1\)になるのと同じように、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}\)も\(1\)になる?
実はこれも、不正解。
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=1\)じゃなくて、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=\infty\) が正解。
他にも\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^3} \)も\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \) の形なんだけど \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=1\)になる。
\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\) の形の例:
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=\infty\) , \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n^3}{n^2}=1\)
同じ\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty } \) であっても、答えは変わっくるんだ。
このように、\(\boldsymbol{\infty – \infty}\)や\(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\)は不定形と言って、計算してもそのままでは結果が決まらないんだ。
じゃあどうするかと言うと、不定形の極限は、不定形ではない形に変形してから計算する必要がある。
具体的には
- \(\boldsymbol{\infty – \infty }\)の場合:「最高次数の項でくくる」
- \(\boldsymbol{\displaystyle\frac{\infty }{\infty } }\)の場合:「分母の最高次数の項で分母と分子を割る」
具体的な解き方は次で詳しく説明するね!
整式と分数式の極限を解くコツ
整式の極限のコツ「\(\infty – \infty \)の場合は最高次数の項でくくる」
たとえば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n)\) を考えるとき、最高次数の項でくくるのがポイント。
この場合、\(n^2 – 3n\)の最高次数の項\(n^2\)でくくってあげる。
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n) = \lim_{n \to \infty} n^2 \left( 1 – \frac{3}{n} \right)\)
ここで \(\displaystyle\frac{3}{n} \to 0\) だから、この極限は \(\infty \cdot (1 – 0)\) で \(\infty \)になる。
※\(\infty \)は値じゃないから、\(\boldsymbol{\infty \cdot (1 – 0)}\)は書いたらダメだよ!
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2 – 3n) &= \lim_{n \to \infty} n^2 \left( 1 – \frac{3}{n} \right) \\
&=\infty
\end{aligned}
\)
分数式の極限のコツ「\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty }\) の場合は分母の最高次数の項で分母と分子を割る」
次に、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} \) を考えてみよう。
この場合、分母の最高次数(この場合は \(n)\)で分母と分子を割る。
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} \ = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{2+\frac{1}{n}}\)
ここで \(\displaystyle\frac{1}{n} \to 0\) だから、この極限は \(\displaystyle\frac{1}{2}\)になる。
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{2n+1} &= \lim_{n \to \infty} \frac{1}{2+\frac{1}{n}} \\
&=\frac{1}{2}
\end{aligned}
\)
このように、「最高次数の項でくくる」や「分母の最高次数の項で分母と分子を割る」といったテクニックを使うと、不定形を解消して計算できるんだ。
最後に例題!
次の極限を求めよ。
(1) \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} n^{-\frac{1}{1000}}\)
(2) \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2-4n^3)\)
(3) \(\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{3n}{n^2-2}\)
(1)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} n^{-\frac{1}{1000}} &= \lim_{n \to \infty} \left(\frac{1}{n}\right)^{\frac{1}{1000}} \\
&=0
\end{aligned}
\)
(2)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} (n^2-4n^3)&=\lim_{n \to \infty} n^3\left(\frac{1}{n}-4\right) \\
&=-\infty
\end{aligned}
\)
(3)
\(
\begin{aligned}
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{3n}{n^2-2}&=\lim_{n \to \infty} \frac{3\cdot\frac{1}{n}}{1-\frac{2}{n^2}}\\
&=0
\end{aligned}
\)
まとめ:数式と分数式の極限
ここまで、数列の極限の基本から、不定形の扱い方、そして整式や分数式の極限の計算方法について解説してきました。
要点を整理すると
- 数列の基本的な極限:
発散や収束の基本パターンを押さえよう。 - 不定形の概念:
「\(\infty – \infty\)」や「\(\displaystyle\frac{\infty }{\infty }\)」をそのまま扱わず、不定形ではない形に変形する。 - 整式と分数式の極限:
「最高次数の項でくくる」「分母の最高次数の項で分母と分子を割る」ことで不定形ではない形に変形できる。
これらのテクニックをしっかりマスターして、整式と分数式の極限問題を自信を持って解けるようにしよう!
「最初に戻って、教科書の説明を読んでみよう!スラスラ理解できるはずだよ!」
コメント