
今日の板書はこれ!
全数調査と標本調査
対象全体をもれなく調べることを全数調査、一部を抜き出して調べることを標本調査という。
母集団と標本
標本調査で、調査対象全体を母集団、母集団から抜き出された要素の全体を標本という。
母集団、標本に含まれる要素の個数を、それぞれ母集団の大きさ、標本の大きさという。
無作為抽出と無作為標本
標本を抜き出すことを抽出という。
標本調査では、確率的な偏りがないように抽出しなければならない。そのために、乱数表やコンピュータで生成した乱数を利用する。
このような偏りのない抽出法を無作為抽出といい、無作為抽出で抽出された標本を無作為標本という。
復元抽出と非復元抽出
1度抽出したものを元に戻してから次のものを抽出する方法を復元抽出、元に戻さずに続けて抽出する方法を非復元抽出という。
大きさ \(n\) の標本の各回の要素を、順に \(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) で表す。
- 復元抽出の場合、\(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) は独立である。
- 非復元抽出の場合、\(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) は独立でない。
- ただし、母集団が十分大きいとき、非復元抽出でも独立とみなせる。
母集団分布
母集団における変量の相対度数分布を母集団分布という。
母集団の平均値、分散、標準偏差を、それぞれ母平均、母分散、母標準偏差という。母平均を \(\color{#8E44AD}{m}\)、母標準偏差を \(\color{#F39800}{\sigma}\) で表す。
これらは、大きさ1の標本の確率変数 \(X_1\) の確率分布、期待値、分散、標準偏差と一致する。
数字1の札が10枚、数字2の札が20枚、数字3の札が30枚ある。この60枚の札を母集団とし、札の数字を変量とするとき、母集団分布を求めよ。また、母平均、母標準偏差を求めよ。
▼ 解答
母集団から1枚の札を無作為抽出するとき、札に書かれた数字 \(X_1\) の確率分布、つまり母集団分布は次のようになる。
\(\begin{array}{c|ccc|c} X_1 & 1 & 2 & 3 & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{6} & \frac{2}{6} & \frac{3}{6} & 1 \end{array}\)
母平均は
\(\begin{aligned}\color{#8E44AD}{m}&=E(X_1)\\[8pt]&=1\times\tfrac{1}{6}+2\times\tfrac{2}{6}+3\times\tfrac{3}{6}\\[8pt]&=\tfrac{14}{6}\\[8pt]&\color{#8E44AD}{=\tfrac{7}{3}}\end{aligned}\)
また、
\(\begin{aligned}E(X_1{}^2)&=1^2\times\tfrac{1}{6}+2^2\times\tfrac{2}{6}+3^2\times\tfrac{3}{6}\\[8pt]&=\tfrac{36}{6}\\[8pt]&=6\end{aligned}\)
よって、母標準偏差は
\(\begin{aligned}\color{#F39800}{\sigma}&=\sigma(X_1)\\[8pt]&=\sqrt{E(X_1{}^2)-\{E(X_1)\}^2}\\[8pt]&=\sqrt{6-\left(\tfrac{7}{3}\right)^2}\\[8pt]&=\sqrt{\tfrac{54-49}{9}}\\[8pt]&\color{#F39800}{=\tfrac{\sqrt{5}}{3}}\end{aligned}\)
別解(度数分布から求める)
母平均は
\(\begin{aligned}\color{#8E44AD}{m}&=\tfrac{1\times10+2\times20+3\times30}{60}\\[8pt]&=\tfrac{140}{60}\\[8pt]&\color{#8E44AD}{=\tfrac{7}{3}}\end{aligned}\)
数字の2乗の平均値は
\(\begin{aligned}&\tfrac{1^2\times10+2^2\times20+3^2\times30}{60}\\[8pt]&=\tfrac{360}{60}\\[8pt]&=6\end{aligned}\)
よって、母標準偏差は
\(\begin{aligned}\color{#F39800}{\sigma}&=\sqrt{6-\left(\tfrac{7}{3}\right)^2}\\[8pt]&\color{#F39800}{=\tfrac{\sqrt{5}}{3}}\end{aligned}\)

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この問題を解きたい!
数字1の札が10枚、数字2の札が20枚、数字3の札が30枚ある。この60枚の札を母集団とし、札の数字を変量とするとき、母集団分布を求めよ。また、母平均、母標準偏差を求めよ。

「母集団」「母集団分布」「母平均」「母標準偏差」…知らない言葉がたくさん出てきたね。この60枚の札を使って、1つずつ意味を確かめていこう!
全数調査と標本調査
この60枚の札に書かれた数字の平均を知りたいとします。
60枚すべての数字を確かめれば、平均は正確に分かります。
このように、対象全体をもれなく調べる方法があります。
しかし、札が6万枚や600万枚あったらどうでしょうか。
すべてを確かめるのは、時間も手間もかかりすぎます。
そこで、一部の札だけを抜き出して調べ、その結果から全体のようすを推測する方法が使われます。
テレビの視聴率調査や工場の製品検査も、この考え方で行われています。
対象全体をもれなく調べることを全数調査、一部を抜き出して調べることを標本調査といいます。


統計的な推測の最終目標は、一部を調べた結果から全体を推測することだよ!
母集団と標本
例題1では、調べたい対象全体は60枚の札です。
この60枚の札が母集団にあたります。
もし、この60枚から5枚を抜き出して調べるとすれば、抜き出した5枚が標本です。
標本調査で、調査対象全体を母集団、母集団から抜き出された要素の全体を標本といいます。

また、母集団に含まれる札は60枚なので、母集団の大きさは60です。
5枚を抜き出したときは、標本の大きさは5になります。
母集団、標本に含まれる要素の個数を、それぞれ母集団の大きさ、標本の大きさといいます。
無作為抽出と無作為標本
標本を抜き出すことを抽出といいます。
標本から全体を正しく推測するには、標本が母集団の縮図になっている必要があります。
例えば、60枚の札が数字の大きい順に積み重ねてあり、その上から5枚を取ったとします。
すると、取り出した札は3ばかりになり、数字の平均を実際より大きく見積もってしまいます。
そこで、札をよく混ぜてから引いたり、札に番号をつけて乱数で番号を選んだりして、どの札も同じ確率で選ばれるようにします。
乱数は、乱数表やコンピュータで作ることができます。

このような偏りのない抽出法を無作為抽出といい、無作為抽出で抽出された標本を無作為標本といいます。

どの札が選ばれるかを偶然にまかせるのがポイントだよ!
復元抽出と非復元抽出
2つの抽出のしかた
60枚の札から2回続けて札を引く場面を考えます。
このとき、1回目に引いた札を元に戻してから2回目を引く方法と、元に戻さずに続けて引く方法の2通りがあります。
1度抽出したものを元に戻してから次のものを抽出する方法を復元抽出、元に戻さずに続けて抽出する方法を非復元抽出といいます。
独立かどうか
1回目に数字1の札を引いたとします。
復元抽出では、札を元に戻すので、2回目も60枚のうち数字1の札は10枚のままです。
よって、2回目に数字1の札を引く確率は \(\frac{10}{60}=\frac{1}{6}\) となり、1回目の結果に関係なく同じです。
一方で、非復元抽出では、残りは59枚で、そのうち数字1の札は9枚になります。
よって、2回目に数字1の札を引く確率は \(\frac{9}{59}\) となり、1回目の結果によって2回目の確率が変わってしまいます。
つまり、1回目と2回目は独立ではありません。

大きさ \(n\) の標本の各回の要素を、順に \(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) で表すと、
- 復元抽出の場合、\(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) は独立である
- 非復元抽出の場合、\(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) は独立でない
母集団が十分大きいとき
では、札の枚数を100倍にして、数字1の札が1000枚、数字2の札が2000枚、数字3の札が3000枚の、合計6000枚だったらどうでしょうか。
1回目に数字1の札を引いて元に戻さなかった場合、2回目に数字1の札を引く確率は \(\frac{999}{5999}\approx0.1665\) です。
これは、元に戻した場合の \(\frac{1}{6}\approx0.1667\) とほとんど変わりません。
このように、母集団が十分大きいときは、非復元抽出でも独立とみなせることが知られています。
実際の調査の多くは非復元抽出ですが、この性質のおかげで、復元抽出と同じように扱うことができます。

母集団が大きければ、1枚抜き出してもほとんど影響がないってことだね!
母集団分布と母平均・母標準偏差
例題1では、札の数字に注目しています。
このように、母集団の要素がもつ調べたい数量を変量といいます。
母集団における変量の相対度数分布を母集団分布といいます。
また、母集団の平均値、分散、標準偏差を、それぞれ母平均、母分散、母標準偏差といい、母平均を \(\color{#8E44AD}{m}\)、母標準偏差を \(\color{#F39800}{\sigma}\) で表します。
これらは、母集団から1枚だけを無作為抽出したときの札の数字、つまり大きさ1の標本 \(X_1\) を使って求めることができます。
母集団分布、母平均、母分散、母標準偏差は、大きさ1の標本の確率変数 \(X_1\) の確率分布、期待値、分散、標準偏差と一致する

これで道具がそろったね!さっそく最初の問題を解いてみよう!
最初の問題を解こう
数字1の札が10枚、数字2の札が20枚、数字3の札が30枚ある。この60枚の札を母集団とし、札の数字を変量とするとき、母集団分布を求めよ。また、母平均、母標準偏差を求めよ。
母集団分布を求める

まずは、1枚だけ取り出すと考えて、確率分布を作ってみよう!
母集団から1枚の札を無作為抽出し、札に書かれた数字を \(X_1\) とします。
60枚のうち数字1の札は10枚なので、\(X_1=1\) となる確率は \(\frac{10}{60}=\frac{1}{6}\) です。
同じように、\(X_1=2\) となる確率は \(\frac{20}{60}=\frac{2}{6}\)、\(X_1=3\) となる確率は \(\frac{30}{60}=\frac{3}{6}\) となります。
よって、\(X_1\) の確率分布、つまり母集団分布は次のようになります。
\(\begin{array}{c|ccc|c} X_1 & 1 & 2 & 3 & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{6} & \frac{2}{6} & \frac{3}{6} & 1 \end{array}\)

ここで、確率 \(\frac{1}{6},\ \frac{2}{6},\ \frac{3}{6}\) は、それぞれの数字の札が全体に占める割合、つまり相対度数そのものです。
だから、\(X_1\) の確率分布は母集団分布と一致します。
母平均を求める
母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\) は、\(X_1\) の期待値 \(E(X_1)\) として求められます。
\(\begin{aligned}\color{#8E44AD}{m}&=E(X_1)\\[8pt]&=1\times\tfrac{1}{6}+2\times\tfrac{2}{6}+3\times\tfrac{3}{6}\\[8pt]&=\tfrac{14}{6}\\[8pt]&\color{#8E44AD}{=\tfrac{7}{3}}\end{aligned}\)
母標準偏差を求める
母標準偏差 \(\color{#F39800}{\sigma}\) は、\(X_1\) の標準偏差 \(\sigma(X_1)\) として求めます。
標準偏差は「2乗の期待値から期待値の2乗を引いたもの」の正の平方根で求められるので、まず \(E(X_1{}^2)\) を計算します。
\(\begin{aligned}E(X_1{}^2)&=1^2\times\tfrac{1}{6}+2^2\times\tfrac{2}{6}+3^2\times\tfrac{3}{6}\\[8pt]&=\tfrac{36}{6}\\[8pt]&=6\end{aligned}\)
よって、母標準偏差は
\(\begin{aligned}\color{#F39800}{\sigma}&=\sigma(X_1)\\[8pt]&=\sqrt{E(X_1{}^2)-\{E(X_1)\}^2}\\[8pt]&=\sqrt{6-\left(\tfrac{7}{3}\right)^2}\\[8pt]&=\sqrt{\tfrac{54-49}{9}}\\[8pt]&\color{#F39800}{=\tfrac{\sqrt{5}}{3}}\end{aligned}\)
となります。
度数分布から求めても同じ
母平均と母標準偏差は、母集団である60枚の札の数字の平均値と標準偏差のことなので、度数分布から直接求めることもできます。
\(\begin{array}{c|c|c} \text{数字} & \text{枚数} & \text{相対度数} \\ \hline 1 & 10 & \frac{1}{6} \\ 2 & 20 & \frac{2}{6} \\ 3 & 30 & \frac{3}{6} \\ \hline \text{計} & 60 & 1 \end{array}\)
母平均は
\(\begin{aligned}\color{#8E44AD}{m}&=\tfrac{1\times10+2\times20+3\times30}{60}\\[8pt]&=\tfrac{140}{60}\\[8pt]&\color{#8E44AD}{=\tfrac{7}{3}}\end{aligned}\)
数字の2乗の平均値は
\(\begin{aligned}&\tfrac{1^2\times10+2^2\times20+3^2\times30}{60}\\[8pt]&=\tfrac{360}{60}\\[8pt]&=6\end{aligned}\)
よって、母標準偏差は
\(\begin{aligned}\color{#F39800}{\sigma}&=\sqrt{6-\left(\tfrac{7}{3}\right)^2}\\[8pt]&\color{#F39800}{=\tfrac{\sqrt{5}}{3}}\end{aligned}\)
どちらの方法で計算しても、母平均は \(\color{#8E44AD}{\frac{7}{3}}\)、母標準偏差は \(\color{#F39800}{\frac{\sqrt{5}}{3}}\) となり、同じ値になりました。

母平均・母標準偏差は、大きさ1の標本 \(X_1\) の期待値・標準偏差と一致する!これが、この先の推定や検定の土台になるよ!
練習問題
次の表は、40枚の札に書かれた数字とその枚数である。40枚を母集団、札の数字を変量とするとき、母集団分布を求めよ。また、母平均、母標準偏差を求めよ。
\(\begin{array}{c|ccccc|c} \text{数字} & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & \text{計} \\ \hline \text{枚数} & 2 & 6 & 24 & 6 & 2 & 40 \end{array}\)
答えを見る
母集団から1枚の札を無作為抽出するとき、札に書かれた数字を \(X_1\) とすると、母集団分布は次のようになる。
\(\begin{array}{c|ccccc|c} X_1 & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & \text{計} \\ \hline P & \frac{2}{40} & \frac{6}{40} & \frac{24}{40} & \frac{6}{40} & \frac{2}{40} & 1 \end{array}\)
母平均は
\(\begin{aligned}\color{#8E44AD}{m}&=1\times\tfrac{2}{40}+2\times\tfrac{6}{40}+3\times\tfrac{24}{40}+4\times\tfrac{6}{40}+5\times\tfrac{2}{40}\\[8pt]&=\tfrac{120}{40}\\[8pt]&\color{#8E44AD}{=3}\end{aligned}\)
また、
\(\begin{aligned}E(X_1{}^2)&=1^2\times\tfrac{2}{40}+2^2\times\tfrac{6}{40}+3^2\times\tfrac{24}{40}\\[8pt]&\quad+4^2\times\tfrac{6}{40}+5^2\times\tfrac{2}{40}\\[8pt]&=\tfrac{388}{40}\\[8pt]&=\tfrac{97}{10}\end{aligned}\)
よって、母標準偏差は
\(\begin{aligned}\color{#F39800}{\sigma}&=\sqrt{\tfrac{97}{10}-3^2}\\[8pt]&=\sqrt{\tfrac{7}{10}}\\[8pt]&\color{#F39800}{=\tfrac{\sqrt{70}}{10}}\end{aligned}\)
まとめ:母集団と標本

さて、今回のまとめだよ!
全数調査と標本調査
対象全体をもれなく調べることを全数調査、一部を抜き出して調べることを標本調査という。
母集団と標本
標本調査で、調査対象全体を母集団、母集団から抜き出された要素の全体を標本という。
母集団、標本に含まれる要素の個数を、それぞれ母集団の大きさ、標本の大きさという。
無作為抽出と無作為標本
標本を抜き出すことを抽出という。
標本調査では、確率的な偏りがないように抽出しなければならない。そのために、乱数表やコンピュータで生成した乱数を利用する。
このような偏りのない抽出法を無作為抽出といい、無作為抽出で抽出された標本を無作為標本という。
復元抽出と非復元抽出
1度抽出したものを元に戻してから次のものを抽出する方法を復元抽出、元に戻さずに続けて抽出する方法を非復元抽出という。
大きさ \(n\) の標本の各回の要素を、順に \(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) で表す。
- 復元抽出の場合、\(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) は独立である。
- 非復元抽出の場合、\(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) は独立でない。
- ただし、母集団が十分大きいとき、非復元抽出でも独立とみなせる。
母集団分布
母集団における変量の相対度数分布を母集団分布という。
母集団の平均値、分散、標準偏差を、それぞれ母平均、母分散、母標準偏差という。母平均を \(\color{#8E44AD}{m}\)、母標準偏差を \(\color{#F39800}{\sigma}\) で表す。
これらは、大きさ1の標本の確率変数 \(X_1\) の確率分布、期待値、分散、標準偏差と一致する。

また一つ賢くなった!

一人だと続かない人は、こんな方法もあるよ!





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