
今日の板書はこれ!
確率変数 \(X\) と定数 \(a,\ b\) に対して、確率変数 \(Y\) を \(Y=aX+b\) とする。
期待値
\(E(aX+b)=aE(X)+b\)
分散
\(V(aX+b)=a^2V(X)\)
標準偏差
\(\sigma(aX+b)=|a|\sigma(X)\)
- \(b\) を加えると、期待値は \(b\) だけ増え、分散・標準偏差は変化しない。
- \(a\) 倍すると、期待値は \(a\) 倍、分散は \(a^2\) 倍、標準偏差は \(|a|\) 倍になる。
1個のさいころを投げて出る目を \(X\) とすると、
\(E(X)=\frac{7}{2}\)、\(V(X)=\frac{35}{12}\)、\(\sigma(X)=\frac{\sqrt{105}}{6}\) である。
このとき、確率変数 \(2X+1\) の期待値、分散、標準偏差を求めよ。
▼ 解答
\(E(2X+1)=2\cdot\frac{7}{2}+1\)
\(=8\)
\(V(2X+1)=2^2\cdot\frac{35}{12}\)
\(=\frac{35}{3}\)
\(\sigma(2X+1)=|2|\cdot\frac{\sqrt{105}}{6}\)
\(=\frac{\sqrt{105}}{3}\)

もっと詳しく願いします!!
現役教員として数学を教えている「さん」と申します。
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意味から理解し、噛み砕き方をマスターしましょう!!
確率変数の変換とは?

確率変数 \(X\) の値を全部2倍したり、全部に1を足したりしたら、期待値や分散はどうなるんですか?

いい質問だね!新しい確率変数 \(Y=aX+b\) の期待値・分散・標準偏差は、確率分布を作り直さなくても、\(X\) の期待値・分散・標準偏差から求められるんだよ。

なんだか数学Ⅰでやったような気が…?

そう!「データの分析」で学習した変量の変換と同じ話なんだ。データの値をずらしたり何倍かしたりしたときの平均と分散の変わり方が、確率変数でもそのまま成り立つよ。

前回の記事で使った確率変数をもう一度使って、イメージをつかんでいこう!
確率変数 \(X\) の確率分布は、次の表のとおりでした。
\(\begin{array}{c|ccc|c} X & 4 & 5 & 6 & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{3} & \frac{1}{3} & \frac{1}{3} & 1 \end{array}\)
期待値は \(E(X)=5\) 、分散は \(V(X)=\frac{2}{3}\) です。
偏差は \(\color{#F39800}{-1},\ \color{#F39800}{0},\ \color{#F39800}{1}\) でした。
すべての値に10を加えると?
まず、\(X\) のすべての値に10を加えた確率変数 \(Y=X+10\) を考えます。
\(Y\) のとる値は 14, 15, 16 で、それぞれの確率は \(X\) のときと同じ \(\frac{1}{3}\) です。
\(\begin{array}{c|ccc|c} Y & \color{#3CB371}{14} & \color{#3CB371}{15} & \color{#3CB371}{16} & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{3} & \frac{1}{3} & \frac{1}{3} & 1 \end{array}\)

分布全体が右へ10だけ平行移動するので、分布の中心である期待値も10だけ動きます。
実際に計算してみます。
\(E(Y)=14\cdot\frac{1}{3}+15\cdot\frac{1}{3}+16\cdot\frac{1}{3}\)
\(=15\)
これは \(E(X)+10=5+10\) と一致します。
次に偏差を見てみます。
\(Y\) のそれぞれの値から \(E(Y)=15\) を引くと、偏差は \(\color{#F39800}{-1},\ \color{#F39800}{0},\ \color{#F39800}{1}\) となり、\(X\) の偏差とまったく同じです。
分散は偏差の2乗の期待値なので、偏差が変わらなければ分散も変わらず、\(V(Y)=\frac{2}{3}\) のままです。

全員が同じだけ動いても、散らばり具合は変わらないよ!
すべての値を3倍すると?
次に、\(X\) のすべての値を3倍した確率変数 \(Y=3X\) を考えます。
\(Y\) のとる値は 12, 15, 18 で、確率はやはりそれぞれ \(\frac{1}{3}\) です。
\(\begin{array}{c|ccc|c} Y & \color{#3CB371}{12} & \color{#3CB371}{15} & \color{#3CB371}{18} & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{3} & \frac{1}{3} & \frac{1}{3} & 1 \end{array}\)

値がすべて3倍になったので、期待値も3倍になり、\(E(Y)=15\) となります。
これは \(3E(X)=3\cdot5\) と一致します。
では、偏差はどうなるでしょうか。
\(Y\) の偏差は \(\color{#F39800}{-3},\ \color{#F39800}{0},\ \color{#F39800}{3}\) となり、\(X\) の偏差 \(\color{#F39800}{-1},\ \color{#F39800}{0},\ \color{#F39800}{1}\) のちょうど3倍です。
分散は偏差を2乗してから期待値をとるので、偏差が3倍になると、2乗したものは \(3^2=9\) 倍になります。
\(V(Y)=(\color{#F39800}{-3})^2\cdot\frac{1}{3}+\color{#F39800}{0}^2\cdot\frac{1}{3}+\color{#F39800}{3}^2\cdot\frac{1}{3}\)
\(=6\)
確かに \(9V(X)=9\cdot\frac{2}{3}=6\) と一致します。

偏差が3倍になって、それを2乗するから、分散は9倍になるんだよ!
標準偏差は |a| 倍になる
標準偏差は分散の正の平方根でした。
分散が \(a^2\) 倍になるので、標準偏差は \(\sqrt{a^2}\) 倍、つまり \(|a|\) 倍になります。
\(a\) が負の数のときも確認しておきます。
\(Y=-5X\) とすると、\(Y\) の偏差は \(\color{#F39800}{5},\ \color{#F39800}{0},\ \color{#F39800}{-5}\) となり、符号が反転します。
しかし、分散では偏差を2乗するので符号は消え、\(V(Y)=25V(X)\) となります。
したがって \(\sigma(Y)=\sqrt{25V(X)}=5\sigma(X)\) となり、標準偏差は \(-5\) 倍ではなく、\(|-5|=5\) 倍になります。

標準偏差は散らばりの大きさだから、マイナスにはならないよ!
公式にまとめる
ここまでの内容を一般の定数 \(a,\ b\) でまとめると、次のようになります。
確率変数 \(X\) と定数 \(a,\ b\) に対して、確率変数 \(Y\) を \(Y=aX+b\) とする。
期待値
\(E(aX+b)=aE(X)+b\)
分散
\(V(aX+b)=a^2V(X)\)
標準偏差
\(\sigma(aX+b)=|a|\sigma(X)\)
- \(b\) を加えると、期待値は \(b\) だけ増え、分散・標準偏差は変化しない。
- \(a\) 倍すると、期待値は \(a\) 倍、分散は \(a^2\) 倍、標準偏差は \(|a|\) 倍になる。
なぜそうなるのか
最後に、公式が成り立つ理由を式で確認しておきます。
\(X\) のとる値を \(x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n\)、それぞれの確率を \(p_1,\ p_2,\ \cdots,\ p_n\) とし、\(Y=aX+b\) のとる値を \(y_k=ax_k+b\) とします。
期待値
期待値は、値に確率をかけて足し合わせたものでした。
\(E(Y)=\sum_{k=1}^{n}y_kp_k=\sum_{k=1}^{n}(ax_k+b)p_k\)
\(=a\sum_{k=1}^{n}x_kp_k+b\sum_{k=1}^{n}p_k=aE(X)+b\)
最後の変形では、\(\sum x_kp_k=E(X)\) と、確率の合計が \(\sum p_k=1\) であることを使っています。
分散
分散のポイントは偏差です。
\(Y\) の偏差を計算すると、次のようになります。
\(\color{#F39800}{y_k-E(Y)}=(ax_k+b)-\{aE(X)+b\}\)
\(=a\{\color{#F39800}{x_k-E(X)}\}\)
\(b\) が打ち消し合って消え、偏差が \(a\) 倍になっています。
これが、さきほど具体例で見たことの一般的な形です。
分散はこれを2乗して確率をかけ、足し合わせたものなので、次のようになります。
\(V(Y)=\sum_{k=1}^{n}\{\color{#F39800}{y_k-E(Y)}\}^2p_k\)
\(=a^2\sum_{k=1}^{n}\{\color{#F39800}{x_k-E(X)}\}^2p_k=a^2V(X)\)
\(\Sigma\) の計算に慣れていなくても、「偏差が \(a\) 倍になり、2乗して \(a^2\) 倍になる」という流れがつかめていれば十分です。
例題1 さいころの目の変換
1個のさいころを投げて出る目を \(X\) とすると、
\(E(X)=\frac{7}{2}\)、\(V(X)=\frac{35}{12}\)、\(\sigma(X)=\frac{\sqrt{105}}{6}\) である。
このとき、確率変数 \(2X+1\) の期待値、分散、標準偏差を求めよ。
\(2X+1\) は、\(a=2,\ b=1\) の場合です。
公式を使えば、\(2X+1\) の確率分布を作らなくても、\(X\) の期待値・分散・標準偏差から直接求められます。
期待値
\(X\) の期待値を2倍して1を加えます。
\(E(2X+1)=2E(X)+1\)
\(=2\cdot\frac{7}{2}+1\)
\(=8\)
分散
\(+1\) は散らばりに影響しないので、\(2^2\) をかけるだけです。
\(V(2X+1)=2^2V(X)\)
\(=4\cdot\frac{35}{12}\)
\(=\frac{35}{3}\)
標準偏差
\(|2|\) をかけます。
\(\sigma(2X+1)=|2|\sigma(X)\)
\(=2\cdot\frac{\sqrt{105}}{6}\)
\(=\frac{\sqrt{105}}{3}\)

標準偏差は、分散 \(\frac{35}{3}\) の正の平方根をとっても求められるよ!
最後に、\(2X+1\) のとる値は 3, 5, 7, 9, 11, 13 です。
確率分布を作って期待値を計算しても同じ結果になるので、練習1で確かめてみましょう。
練習問題
例題1について、確率変数 \(2X+1\) の確率分布を求め、それを利用して期待値を求めよ。
答えを見る
\(2X+1\) の確率分布は次のようになる。
\(\begin{array}{c|cccccc|c} 2X+1 & \color{#3CB371}{3} & \color{#3CB371}{5} & \color{#3CB371}{7} & \color{#3CB371}{9} & \color{#3CB371}{11} & \color{#3CB371}{13} & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{6} & \frac{1}{6} & \frac{1}{6} & \frac{1}{6} & \frac{1}{6} & \frac{1}{6} & 1 \end{array}\)
よって、
\(E(2X+1)=\color{#3CB371}{3}\cdot\frac{1}{6}+\color{#3CB371}{5}\cdot\frac{1}{6}+\cdots+\color{#3CB371}{13}\cdot\frac{1}{6}\)
\(=\frac{48}{6}\)
\(=8\)
例題1の確率変数 \(X\) に対して、次の確率変数の期待値を求めよ。
(1) \(4X-1\)
(2) \(-3X\)
答えを見る
(1)
\(E(4X-1)=4E(X)-1\)
\(=4\cdot\frac{7}{2}-1\)
\(=13\)
(2)
\(E(-3X)=-3E(X)\)
\(=-3\cdot\frac{7}{2}\)
\(=-\frac{21}{2}\)
例題1の確率変数 \(X\) に対して、次の確率変数の期待値、分散、標準偏差を求めよ。
(1) \(X-4\)
(2) \(-2X+7\)
答えを見る
(1)
\(E(X-4)=E(X)-4\)
\(=\frac{7}{2}-4\)
\(=-\frac{1}{2}\)
\(V(X-4)=V(X)\)
\(=\frac{35}{12}\)
\(\sigma(X-4)=\sigma(X)\)
\(=\frac{\sqrt{105}}{6}\)
(2)
\(E(-2X+7)=-2E(X)+7\)
\(=-2\cdot\frac{7}{2}+7\)
\(=0\)
\(V(-2X+7)=(-2)^2V(X)\)
\(=4\cdot\frac{35}{12}\)
\(=\frac{35}{3}\)
\(\sigma(-2X+7)=|-2|\sigma(X)\)
\(=2\cdot\frac{\sqrt{105}}{6}\)
\(=\frac{\sqrt{105}}{3}\)
まとめ:確率変数の変換

さて、今回のまとめだよ!
確率変数 \(X\) と定数 \(a,\ b\) に対して、確率変数 \(Y\) を \(Y=aX+b\) とする。
期待値
\(E(aX+b)=aE(X)+b\)
分散
\(V(aX+b)=a^2V(X)\)
標準偏差
\(\sigma(aX+b)=|a|\sigma(X)\)
- \(b\) を加えると、期待値は \(b\) だけ増え、分散・標準偏差は変化しない。
- \(a\) 倍すると、期待値は \(a\) 倍、分散は \(a^2\) 倍、標準偏差は \(|a|\) 倍になる。
\(Y\) の偏差は \(X\) の偏差の \(a\) 倍になり、\(b\) は偏差に影響しない。

また一つ賢くなった!






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