【数学B】統計的な推測02:標本平均の期待値と標準偏差

標本平均の期待値と標準偏差 統計的な推測
さん
さん

今日の板書はこれ!

標本平均の期待値と標準偏差

■ 標本平均と標本標準偏差
母集団から抽出した大きさ \(n\) の標本 \(\{X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\}\) を1つのデータとみたとき、その平均値 \(\overline{X}\)、分散 \(S^2\)、標準偏差 \(S\) を、それぞれ標本平均、標本分散、標本標準偏差という。

\(\overline{X}=\frac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n}\)

\(S=\sqrt{\frac{1}{n}\left\{(X_1-\overline{X})^2+(X_2-\overline{X})^2+\cdots+(X_n-\overline{X})^2\right\}}\)

■ 標本平均の期待値と標準偏差
母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\)、母標準偏差 \(\color{#F39800}{\sigma}\) の母集団から大きさ \(n\) の無作為標本を抽出するとき、標本平均 \(\overline{X}\) の期待値と標準偏差は次のようになる。

\(E(\overline{X})=\color{#8E44AD}{m}\) \(\sigma(\overline{X})=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}\)

■ 大数の法則
母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\) の母集団から大きさ \(n\) の無作為標本を抽出するとき、標本の大きさ \(n\) が大きくなると、標本平均 \(\overline{X}\) は母平均 \(m\) に近い値をとる確率が高くなる。この性質を大数の法則という。

例題1

母平均60、母標準偏差5の十分大きい母集団から、大きさ25の標本を抽出するとき、その標本平均 \(\overline{X}\) の期待値と標準偏差を求めよ。


▼ 解答

母平均 \(\color{#8E44AD}{m}=60\)、母標準偏差 \(\color{#F39800}{\sigma}=5\)、標本の大きさ \(n=25\) であるから、

\(E(\overline{X})=\color{#8E44AD}{m}\color{#EE4656}{=60}\)

\(\sigma(\overline{X})=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}=\frac{5}{\sqrt{25}}\color{#EE4656}{=1}\)

生徒
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さん
さん

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この問題を解きたい!

例題1

母平均60、母標準偏差5の十分大きい母集団から、大きさ25の標本を抽出するとき、その標本平均 \(\overline{X}\) の期待値と標準偏差を求めよ。

さん
さん

「標本平均」「期待値」「標準偏差」…この問題を解くには、まず標本平均が何なのかを知る必要があるよ。順番に確かめていこう!

標本平均とは?

例題1では、母集団から25個を取り出し、その25個の平均値を考えています。

この平均値が標本平均です。

まずは、前回の記事と同じ60枚の札を使って、具体的に見てみましょう。

数字1の札が10枚、数字2の札が20枚、数字3の札が30枚の、合計60枚の札から4枚を無作為抽出したところ、数字が順に 1, 3, 3, 1 だったとします。

60枚の札から4枚を無作為抽出した標本
さん
さん

この4枚を1つのデータとみて、平均と標準偏差を計算してみよう!

4つの数字の平均値は、次のようになります。

\(\overline{X}=\frac{1+3+3+1}{4}=2\)

分散は偏差の2乗の平均値なので、

\(S^2=\frac{(1-2)^2+(3-2)^2+(3-2)^2+(1-2)^2}{4}=1\)

となり、標準偏差は \(S=\sqrt{1}=1\) です。

生徒
生徒

データの分析で習った、平均・分散・標準偏差と同じ計算ですね!

さん
さん

そのとおり!標本を1つのデータとみたときの値には、それぞれ名前がついているよ!

このように、大きさ \(n\) の標本 \(\{X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\}\) を1つのデータとみたとき、その平均値 \(\overline{X}\)、分散 \(S^2\)、標準偏差 \(S\) を、それぞれ標本平均、標本分散、標本標準偏差といいます。

式で書くと次のとおりです。

\(\overline{X}=\frac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n}\)

\(S=\sqrt{\frac{1}{n}\left\{(X_1-\overline{X})^2+(X_2-\overline{X})^2+\cdots+(X_n-\overline{X})^2\right\}}\)

さん
さん

標本標準偏差 \(S\) は、あとで母平均を推定するときに使うよ!今回の主役は標本平均 \(\overline{X}\) だよ!

標本平均は標本ごとに変わる

先ほどの4枚では \(\overline{X}\) は2でした。

しかし、もう一度4枚を抜き出すと、今度は 3, 2, 3, 3 となって \(\overline{X}=\frac{11}{4}\) になるかもしれません。

標本ごとに標本平均の値が変わるイメージ

このように、標本平均 \(\overline{X}\) は、どの標本が選ばれるかによって値が変わります。

つまり、\(\overline{X}\) は確率変数なので、確率分布や期待値、標準偏差を考えることができます。

例題1で求めるのは、25個の標本を何度も取り出したときに \(\overline{X}\) が平均的にどんな値になるか(期待値)と、どのくらいばらつくか(標準偏差)です。

生徒
生徒

標本平均がどんな値になりやすいかを調べるってことですね!

標本平均の期待値と標準偏差

標本平均の期待値と標準偏差のイメージ

標本平均の期待値と標準偏差とは、標本を何回も取り出して求めた標本平均の値を1つのデータとみたときの、その平均と標準偏差のことです。いわば「平均の平均」と「平均のばらつき」です。

標本平均 \(\overline{X}\) の期待値と標準偏差は、母平均と母標準偏差を使って、次の公式で求められます。

母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\)、母標準偏差 \(\color{#F39800}{\sigma}\) の母集団から大きさ \(n\) の無作為標本を抽出するとき、

\(E(\overline{X})=\color{#8E44AD}{m}\) \(\sigma(\overline{X})=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}\)

つまり、標本平均の期待値は母平均と一致し、標準偏差は母標準偏差の \(\frac{1}{\sqrt{n}}\) 倍になります。

さん
さん

なぜこの公式が成り立つのかは、下の2つで確かめられるよ。気になったら開いてみてね!

60枚の札から、復元抽出で2枚を取り出す場合を考えます。

1回目の数字を \(X_1\)、2回目の数字を \(X_2\) とすると、どちらも1枚だけを取り出したときと同じ、次の母集団分布にしたがいます。

\(\begin{array}{c|ccc|c} X_k & 1 & 2 & 3 & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{6} & \frac{2}{6} & \frac{3}{6} & 1 \end{array}\)

前回の記事で求めたとおり、母平均は \(\color{#8E44AD}{m}=\frac{7}{3}\)、母標準偏差は \(\color{#F39800}{\sigma}=\frac{\sqrt{5}}{3}\) です。

復元抽出なので、\(X_1\) と \(X_2\) は独立です。

標本平均 \(\overline{X}=\frac{X_1+X_2}{2}\) が2になるのは、\((X_1,\ X_2)=(1,\ 3),\ (2,\ 2),\ (3,\ 1)\) の場合なので、確率は次のようになります。

\(P(\overline{X}=2)=\frac{1}{6}\times\frac{3}{6}+\frac{2}{6}\times\frac{2}{6}+\frac{3}{6}\times\frac{1}{6}=\frac{10}{36}\)

ほかの値も同じように求めると、\(\overline{X}\) の確率分布は次のようになります。

\(\begin{array}{c|ccccc|c} \overline{X} & 1 & \frac{3}{2} & 2 & \frac{5}{2} & 3 & \text{計} \\ \hline P & \frac{1}{36} & \frac{4}{36} & \frac{10}{36} & \frac{12}{36} & \frac{9}{36} & 1 \end{array}\)

1枚の数字の確率分布と2枚の標本平均の確率分布

この確率分布から、\(\overline{X}\) の期待値を計算します。

\(\begin{aligned}E(\overline{X})&=1\times\tfrac{1}{36}+\tfrac{3}{2}\times\tfrac{4}{36}+2\times\tfrac{10}{36}+\tfrac{5}{2}\times\tfrac{12}{36}+3\times\tfrac{9}{36}\\[8pt]&=\tfrac{84}{36}\color{#8E44AD}{=\tfrac{7}{3}}\end{aligned}\)

母平均 \(\color{#8E44AD}{m}=\frac{7}{3}\) とぴったり一致しました。

次に、分散を求めます。

まず、\(\overline{X}^2\) の期待値は次のようになります。

\(\begin{aligned}E(\overline{X}^2)&=1^2\times\tfrac{1}{36}+\left(\tfrac{3}{2}\right)^2\times\tfrac{4}{36}+2^2\times\tfrac{10}{36}+\left(\tfrac{5}{2}\right)^2\times\tfrac{12}{36}+3^2\times\tfrac{9}{36}\\[8pt]&=\tfrac{206}{36}=\tfrac{103}{18}\end{aligned}\)

よって、 \(V(\overline{X})=\frac{103}{18}-\left(\frac{7}{3}\right)^2=\frac{103-98}{18}=\frac{5}{18}\) です。

母分散は \(\color{#F39800}{\sigma}^2=\left(\frac{\sqrt{5}}{3}\right)^2=\frac{5}{9}\) なので、\(\overline{X}\) の分散は母分散のちょうど半分になっています。

\(V(\overline{X})=\frac{5}{18}=\frac{1}{2}\times\frac{5}{9}=\frac{\color{#F39800}{\sigma}^2}{2}\)

標準偏差にすると、 \(\sigma(\overline{X})=\sqrt{\frac{\color{#F39800}{\sigma}^2}{2}}=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{2}}\) となり、標本の大きさ \(n=2\) のときの公式と一致します。

母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\)、母標準偏差 \(\color{#F39800}{\sigma}\) の母集団から、大きさ \(n\) の無作為標本 \(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) を抽出します。

それぞれの \(X_k\) は、それだけを見れば大きさ1の標本です。

前回の記事で確かめたように、大きさ1の標本の期待値と分散は、母平均と母分散に一致するので、次のようになります。

\(E(X_1)=E(X_2)=\cdots=E(X_n)=\color{#8E44AD}{m}\)

\(V(X_1)=V(X_2)=\cdots=V(X_n)=\color{#F39800}{\sigma}^2\)

期待値には、\(E(aX+bY)=aE(X)+bE(Y)\) という性質があります。

これを使うと、\(\overline{X}\) の期待値は次のように計算できます。

\(\begin{aligned}E(\overline{X})&=E\left(\tfrac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n}\right)\\[8pt]&=\tfrac{E(X_1)+E(X_2)+\cdots+E(X_n)}{n}\\[8pt]&=\tfrac{m+m+\cdots+m}{n}=\tfrac{nm}{n}\\[8pt]&\color{#8E44AD}{=m}\end{aligned}\)

分散には、\(X\) と \(Y\) が独立のとき \(V(aX+bY)=a^2V(X)+b^2V(Y)\) という性質があります。

母集団が十分大きいとき(または復元抽出のとき)、\(X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\) は独立とみなせるので、\(\overline{X}\) の分散は次のようになります。

\(\begin{aligned}V(\overline{X})&=V\left(\tfrac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n}\right)\\[8pt]&=\tfrac{V(X_1)+V(X_2)+\cdots+V(X_n)}{n^2}\\[8pt]&=\tfrac{\sigma^2+\sigma^2+\cdots+\sigma^2}{n^2}=\tfrac{n\sigma^2}{n^2}\\[8pt]&\color{#EE4656}{=\tfrac{\sigma^2}{n}}\end{aligned}\)

標準偏差は分散の正の平方根なので、 \(\sigma(\overline{X})=\sqrt{\frac{\sigma^2}{n}}\color{#EE4656}{=}\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}\) となります。

さん
さん

公式がそろったね!さっそく最初の問題を解いてみよう!

最初の問題を解こう

例題1

母平均60、母標準偏差5の十分大きい母集団から、大きさ25の標本を抽出するとき、その標本平均 \(\overline{X}\) の期待値と標準偏差を求めよ。

母平均・母標準偏差・標本の大きさを読み取る

問題文から、母平均は \(\color{#8E44AD}{m}=60\)、母標準偏差は \(\color{#F39800}{\sigma}=5\)、標本の大きさは \(n=25\) です。

母集団が十分大きいので、25個の標本は独立とみなせて、先ほどの公式が使えます。

標本平均の期待値を求める

標本平均の期待値は母平均と一致するので、 \(E(\overline{X})=\color{#8E44AD}{m}\color{#EE4656}{=60}\) です。

標本平均の標準偏差を求める

標本平均の標準偏差は、母標準偏差を \(\sqrt{n}\) で割ればよいので、 \(\sigma(\overline{X})=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}=\frac{5}{\sqrt{25}}\color{#EE4656}{=1}\) です。

母集団の標準偏差は5ですが、25個の平均をとると、標本平均の標準偏差は1まで小さくなることが分かります。

さん
さん

平均をとると、極端な値どうしが打ち消し合うから、ばらつきが小さくなるんだね!

大数の法則

標本平均の標準偏差 \(\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}\) は、標本の大きさ \(n\) が大きいほど小さくなります。

これがどういうことなのか、図で見てみましょう。

大きさ2と大きさ7の標本の標本平均のばらつき

左の母集団は 1 から 9 までの9つの値で、母平均は \(\color{#8E44AD}{m}=5\)(紫の点線)です。

右は、この母集団から標本を何度も取り出し、選ばれた値(黒い点)の平均を緑の線で表したものです。

大きさ2の標本では、\(\overline{X}\) は2になったり8になったりして、母平均から大きく外れることがあります。

一方、大きさ7の標本では、\(\overline{X}\) はどれも5の近くに集まっています。

生徒
生徒

たくさん取り出すほど、標本平均が母平均に近づくんですね!

60枚の札の例でも、標本の大きさ \(n\) を大きくしたときの \(\sigma(\overline{X})=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}\) を計算すると、\(\color{#F39800}{\sigma}=\frac{\sqrt{5}}{3}\approx0.745\) なので次のようになります。

\(\begin{array}{c|cccc} n & 1 & 2 & 10 & 100 \\ \hline \sigma(\overline{X}) & 0.745 & 0.527 & 0.236 & 0.075 \end{array}\)

一般に、母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\) の母集団から大きさ \(n\) の無作為標本を抽出するとき、標本の大きさ \(n\) が大きくなると、標本平均 \(\overline{X}\) は母平均 \(m\) に近い値をとる確率が高くなることが知られています。

この性質を大数の法則といいます。

さん
さん

たくさん調べるほど、標本平均は母平均に近づく!一部を調べて全体を推測できるのは、この法則のおかげだよ!

練習問題

練習1

母平均170、母標準偏差8の十分大きい母集団から、大きさ16の標本を抽出するとき、その標本平均 \(\overline{X}\) の期待値と標準偏差を求めよ。

答えを見る

母平均 \(\color{#8E44AD}{m}=170\)、母標準偏差 \(\color{#F39800}{\sigma}=8\)、標本の大きさ \(n=16\) であるから、

\(E(\overline{X})=\color{#8E44AD}{m}\color{#EE4656}{=170}\)

\(\sigma(\overline{X})=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}=\frac{8}{\sqrt{16}}\color{#EE4656}{=2}\)

まとめ:標本平均の期待値と標準偏差

さん
さん

さて、今回のまとめだよ!

標本平均の期待値と標準偏差

■ 標本平均と標本標準偏差
母集団から抽出した大きさ \(n\) の標本 \(\{X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n\}\) を1つのデータとみたとき、その平均値 \(\overline{X}\)、分散 \(S^2\)、標準偏差 \(S\) を、それぞれ標本平均、標本分散、標本標準偏差という。

\(\overline{X}=\frac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n}\)

\(S=\sqrt{\frac{1}{n}\left\{(X_1-\overline{X})^2+(X_2-\overline{X})^2+\cdots+(X_n-\overline{X})^2\right\}}\)

■ 標本平均の期待値と標準偏差
母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\)、母標準偏差 \(\color{#F39800}{\sigma}\) の母集団から大きさ \(n\) の無作為標本を抽出するとき、標本平均 \(\overline{X}\) の期待値と標準偏差は次のようになる。

\(E(\overline{X})=\color{#8E44AD}{m}\) \(\sigma(\overline{X})=\frac{\color{#F39800}{\sigma}}{\sqrt{n}}\)

■ 大数の法則
母平均 \(\color{#8E44AD}{m}\) の母集団から大きさ \(n\) の無作為標本を抽出するとき、標本の大きさ \(n\) が大きくなると、標本平均 \(\overline{X}\) は母平均 \(m\) に近い値をとる確率が高くなる。この性質を大数の法則という。

生徒
生徒

また一つ賢くなった!

さん
さん

一人だと続かない人は、こんな方法もあるよ!

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